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私見公論
2013年5月10日(金)22:30

境界線③/粟國 雅博

私見公論68


日中漁業協定水域図1

日中漁業協定水域図1

 4月10日に日本と台湾の漁業協定が締結されてしまった。それも、われわれが懸念していた最悪の内容よりもさらに譲歩した形での締結である(図1:ア~サで囲まれた点線の水域)。3月12日に水産庁の官僚が1人で来島し、宮古島の3漁協の代表理事3人を集め、日台漁業協定の事前協議に関する進捗状況等の説明会を開いた。


 その時点では、図2のAとBの海域のみで協定を締結する内容であった。宮古島市在の3漁協は、AとBだけの海域

日中漁業協定水域図2

日中漁業協定水域図2

なら競合する漁業が少ない(3漁協にマグロはえ縄船はいない)ため、マグロはえ縄漁以外の漁は行わないことを条件に水産庁が進める案に理解を示した。

 その後、締結前日まで水産庁からの説明や連絡はなかった。締結を知ったのは4月9日になって、明日締結する見込みと聞かされた。われわれ、少なくとも私は、AとBのみの締結であろうと信じて疑わなかった。結果は、新聞やテレビなどのメディアを通じて締結された内容を知った。図2のA・B・C(一部)・Fすべてを譲った格好だ。日本側は譲歩したのに台湾側は何も譲歩していない。

 これまで台湾政府が勝手に決めていた暫定執法線も撤回していない。台湾政府は宮古島南方の今回締結された漁場以外の海域でも操業を保護すると言っている。日本側の全面敗北の感がある。宮古島漁協に限って言えば、Fに含まれる尖閣諸島の沿岸域はマチ類やハタ類の好漁場であり最後の秘境である。宮古島沿岸とは全く違う魚影の濃さを誰もが感じられる好漁場だ! そんな絶好の漁場までも日本政府は譲ってしまった。「法令適用除外水域」というおまけまで付けてあげてしまった。

 日本の漁船には水産法令の順守を求め、台湾船には日本の法令を適用しないという内容の水域である。われわれにはどんな漁をしてもよいという許可は出ていない。台湾の漁船には、底はえ縄漁や小魚までも一網打尽にしてしまう巻き網漁、海底をずたずたに破壊してしまう深海サンゴ漁など、現状では何をやっても日本側に取り締まることはできない。

 漁業協定の操業ルールは協定を締結した後に、これから整備すると言っている。内容はまだ決まってない。操業ルールを取り決めるため、5月7日に日台漁業委員会が台湾で開かれたが、お互いの主張が折り合わず、何も決められずに終了した。法令適用除外水域はすでに締結内容に明記されているのに…まったく理解できない。宮古島の3漁協の要望は、マグロはえ縄漁以外の漁業をしないでほしい。ただそれだけである。

 何年間も途絶えていた日台漁業協定締結を、日本政府はなぜに急いだのか? 詳しい関係者の話を総合すると、尖閣問題でもめている中国政府と台湾側の共闘を嫌ったかららしい。われわれ漁民や水産庁の意見というよりも外務省や官邸の意向が強い。いつの場合でも、北緯27度以南を日本政府は簡単に切り捨てる。沖縄をどのように考えているのだろうか?

 最後に、日本と台湾の間には国交がない。漁業協定を締結したのは日本と台湾の両政府ではなく、両国の民間団体間の協定締結である。

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