宮古島マンゴーのブランド化を目指して(4)/上地克冶
私見公論70
前回のコラムで安定供給を阻害する大きな要因は、隔年結果ではないかと申し上げましたが、他にもいろいろ考えられます。まず咲いたマンゴーの花を確実に受粉させなければなりません。これまで受粉昆虫はハエが主流でした。理由としては経費が安価であることと、寒くても働きがよいこと、それに予備のハエを作ることにより薬剤散布の影響を受けにくいことなどがあげられます。反面、衛生的によくないイメージがあります。
これまで沖縄県の農林水産部も研修等でもハエのイメージが悪いので、積極的に受粉昆虫がハエであることは公言しないほうがよいとの指導をしてきました。私どもが営業に行くデパートや市場でも受粉昆虫がハエだと聞くと嫌な顔もされました。しかし4年くらい前ミツバチの集団脱走がマスコミで報じられ、NHKのお昼の放送で、岡山県の農業試験場がミツバチの代替昆虫として銀バエを養殖し、養殖であるため清潔との放送が流れると、受粉昆虫としてハエが認知されるようになり、県の農水部でもハエの活用を積極的に指導するようになりました。
一方、ミツバチの方はマンゴーの花があまり好きではなく、寒さにも弱いとの理由と、ハエに比べると経済的負担があるとの理由から積極的な導入は少なかったようです。しかし私どもは受粉の確立を少しでも上げたいとの趣旨から、ミツバチとハエの両方を活用することにより受粉率の向上に努めています。余談になりますがハエを作るのが安価と書きましたが、ハエの呼び寄せ食材として、マンゴー農家はこれまで魚屋さんで、魚の骨や内臓を分けてもらっていましたが、今年から需要が多くて、魚の骨や内臓も販売するようになったそうです。
花が咲き、めでたく受粉が済んでもマンゴー作りの安定供給はまだまだハードルがあります。良い商品を作るための天敵がスリップスやタンソの病害虫です。各生産農家さんもいろいろ工夫して病害虫対策をしていますが、私どもは残念ながらまだ無農薬でマンゴーを栽培することはできません。しかし少しでも減農薬に努めたいとの観点から、第2回のコラムでも書かせていただきましたが、皆で研究して、いま忌避材としてレモングラスを試験的に導入したり、ヒカリ触媒の活用に取り組んでいます。
これからは出荷戦略について述べてみたいと思います。私たちはブランド化の第一歩として、まずは最初にお客様の目に飛び込む箱に着目し、各農園ともできるだけ共通の箱を使うことにしようと意見の一致を見ることができました。そして一目瞭然でどこでも出荷組合の箱であることが分かるような箱を作りたいと思い、皆で相談しつてがあった浦添市のデザイン専門学校の先生に出荷組合を結成するまでの経緯や箱にこだわるコンセプトをお話しさせていただき相談したところ、快く引き受けていただきました。
これまで宮古島のマンゴーの箱はほとんどが宮古島の風景か、青い海や空を基調にしていました。出来上がった私たちの箱はこれまでの箱のイメージを覆し、古き良き沖縄の家族をイメージを彷彿させるものでした。あまりのユニークさに不安を覚え率直に先生に相談したところ、宮古島の数ある果実にストーリー性を持たせることをブランド化の戦略とし、その一つの中にマンゴーがあるのでそのイメージで宮古島マンゴー物語にしました。絶対受け入れられると思うので、この企画を大事にしてほしいと言われながらも不安を払拭することができず、組合の皆に図る前に友人知人や市場関係の方々に相談したところ、予想以上の反応がありました。それでも自信の無いまま組合の仲間にお披露目したところ、予想外の反応でこれまでに無い斬新さとユニークさがあるので面白いのではないか、このアイデアを大事にしようと意見がまとまりました。とは言うものの果たしてお客様に受け入れられるか一抹の不安は残されたままでした。肝心の箱が出来上がり共同出荷の足がかりとなる第一歩です。後はお客様の反応を期待しつつ結果を待つのみです。