行雲流水
2013年6月12日(水)23:46
「オオゴマダラ」(行雲流水)
クマゼミのけたたましい初鳴きが耳にとどいた日どこからともなく一羽の蝶が優雅に飛来した。純白地に黒い放射線状の筋とまだら斑点が鮮やかな羽。オオゴマダラである
▼面の広い羽は水平に開くと10㌢余もある日本では最大級の蝶でその大きな羽をゆったりと上下させながらなぜか半径5㍍ほどの〝空域〟だけを前後左右に繰り返し移動している
▼〝空域〟の下の棚には2年前オオゴマダラが優雅に飛び交う姿を期待して植えたツル性のホウライカガミが生長よく育ち畳3枚ほども枝葉を伸ばして這っている。ホウライカガミはオオゴマダラの食草である
▼棚に羽をたたんで静止しているオオゴマダラを視野に複雑にからみあうホウライカガミの大小の枝葉を見やっていると突然葉の陰に隠れていた幼虫の半身が目に飛びこんできた。白黒の横縞に赤い斑点が並ぶ紛れもないオオゴマダラの幼虫である
▼さらに周りを注視すると大小4匹もの幼虫が細枝や葉にへばりついていた。以前時折訪れてじゃれ合いながら舞っていたオオゴマダラたちの愛の結晶か。小躍りした。となると庭に住みつき〝空域〟を静々と優雅に飛翔しているオオゴマダラは幼虫たちの母親に違いない
▼わが子の健全な成長を見守り見とどけようと休む間もなく舞っている。そう確信した。株高はアベノミクスの恩恵と浮かれほくそ笑む投資家たちに重ね合わせ「おいしい物を食べさせたかった」の遺書を残して母子餓死状態で見つかった若い母親の胸中を思うとやるせない。(知)