生活文化を見直そう!シマ素材と技に学ぶ
2013年おきなわ県民カレッジ
2013年度おきなわ県民カレッジ宮古地区広域学習サービス講座は、「シマの素材と技に学ぶ」をテーマに7月27日から4回シリーズでスタートした。毎年「まちづくり・ふるさと学コース」として行われている。今回は生活文化として、昔から使われてきた素材を使い、先人が編み出した技を追体験、植物の多様性を認識すると共に、先人の知恵を学ぼうというもの。1回目が「木々の手触り」(講師/東江賢次氏)で、島木のキャーギ(イヌマキ)やヤラブ(テリハボク)などでマイ箸作り。2回目が「アダンのある暮らし」(講師/渡久山千代子氏)で、アダナスの箸袋作り、3回目が「チョマと地機」(講師/仲間伸恵氏)で、ブーで織るランチョンマット、4回目に「マミ(ダイズ)の記憶」(講師/津嘉山千代氏)として豆腐作り。一貫した流れの中で受講者は島の生活文化を改めて見直した。
<1回目>「マイ箸作り」(7月27日/宮古青少年の家)
キャーギ(イヌマキ)やヤラブ(テリハボク)など、島木に触れることから始めた東江講師は、木を伐ることが環境にいかに悪いかを話し、地球温暖化防止のためにも、森林資源の循環利用を勧めた。樹木の性格や、いかに暖かいかということなどにも触れ、箸に適した木を挙げた。今回は身近にある島木を使ってマイ箸が作られた。
作り方は、比較的まっすぐな枝を探し、乾燥させ製材する。1㎝角、22・5㎝の長さに箸の部材を切り出す。箸の頭部は八角形になるように線を引く。箸の先端になる箇所に径3㎜の線を引き、部材を治具にのせてカンナで削る。箸の形が出来たらサンドペーパーでつるつるになるまで磨く。仕上げに木固めエース(プレポリマー)を刷毛で塗る。吸い込みが無くなるまで繰り返し塗る。
1日程度乾かし、ガサガサの箇所があれば耐水ペーパーで軽く水研ぎし、つるつるにして出来上がり。
<2回>「箸袋作り」(8月3日/池間島離島振興センター)
渡久山講師を中心にチガヤ工房の皆さん、いけま学校の講師らと共に、まずアダナス(アダンの気根)を編むことから始めた。宮古においてアダンは多様な用途に使用され、生活に欠かせない重要な生活資材だった。講座では、アダンの歴史的な位置づけや、利用方法などについて考え、アダナスで綯った縄で箸袋を作った。
島の海岸周辺に生育するアダンは、昔から梱包用の縄として、またアダンバぞうりと呼ばれる履き物として、パイナップルに似た果実は旧盆の供え物としてさまざまな用途があった。こうしたアダナスを綯う作業は日常的に各家で行われていた。現代ではそれに変わる多くの物があり、縄を綯うという行為も忘れられている。講座では、縄を綯う作業から始めた。多くの参加者が初めてとあって、その要領やこつを覚えるのに時間がかかった。
原料ができると箸袋の編み方を講師に指導してもらい、前回作った箸に合わせて形を整えていた。
<3回>「ランチョンマット作り」(8月10日/宮古青少年の家)
量産が目的となった現代の織物の世界では高機が主流となった。今回の講座では、以前使われていた地機の要領で糸を織り、それでランチョンマットを仕上げようというもの。仲間講師は「宮古に高機が導入される以前に使用されてきた地機がどのような仕組みだったのか、素材として使用されたチョマはどんな植物だったのかを考えてみたい」と話し、チョマがどのようにしてブー(糸)になっていくかを受講者と共に実践した。
宮古織物研究会によって作られた腰機の模型を使って織りを体験することになった受講者。まずは木枠で整経、経糸の長さと本数を整えた。次に綜絖製作、下側の経糸を持ち上げて開口部となる装置を作った。この後、実際織りに入り緯糸を通していく作業を繰り返した。途中で木枠から外し、腰機で織ってみる受講者もいた。木綿やブー、さまざまな糸を使ってマットを織り上げていた。
<4回>「豆腐作り」(8月17日/ゆいみなぁ調理室)
豆腐は、ハレの日に必ず登場するご馳走だった。各家で作り、お祝いの贈り物にも豆腐を持って行った。畑のたんぱく質といわれた豆腐は当時ゲザイズが原料で、以前の農家はそれぞれで栽培して使用していた。収穫時は、鞘から実を取り出す作業に、隣近所が一緒になってマミウツをした。円陣を組み、棒を振り回す光景は風物詩ともなった。しばらくすると、周辺にモヤシが生え、それを採集する楽しみもあった。
津嘉山講師の指導で大豆を使ったゆし豆腐、おからの炒め物、大豆入りのミズナの和え物などが作られ、食卓をにぎやかにした。閉校式ともなったこの日は、アダナスの箸袋に入ったマイ箸を使い、ブーで編んだランチョンマットに大豆のご馳走を並べていただいた。受講者の山口ナオミさんは「地元のものでこんなにさまざまな物ができたことに驚いている。もっと宮古島産が根付いていくと良い」と話し、先人の知恵に改めて感謝を示していた。