行雲流水
2013年10月8日(火)9:00
「サシバ」(行雲流水)
きょうは寒露の入り。例年、この頃から秋の風物詩サシバが飛来する。しかし、今年は台風の影響が心配される。サシバは大陸や日本列島の各地で繁殖、愛知県の伊良湖岬を通って鹿児島県の佐多岬に集結、気象条件のいい日に南下、フィリピン等の越冬地に向かう。その途中、宮古島で羽を休める
▼芭蕉は片雲の風に誘われて、漂泊の思いやまず、旅に出たのだが、サシバを渡りの衝動にかき立てるのは何だろうか。おそらく、それはDNAに刻まれた、何万年もの間に蓄積された生きる戦略の記憶だろう
▼人はサシバの精悍な姿と飛翔の美しさに魅せられ、小さな身体で海山を越えて果敢に旅を続けるけなげな姿に感情移入を行う。その昔、空を覆うほどに大群が飛来していた頃子どもだった人は、思い出をよみがえらせる。ビー玉遊びがあった。たこが空高く飛んだ。体育祭の練習でフォークダンスを踊ったグラウンドの空にはサシバがいた
▼サシバは一直線に目標に向かって滑空する。悠々と描く曲線は舞いである。直線と曲線で青空に大文字を書いてもらおう。文字は「旅」でも「愛」でもいいが、「花は咲く」にしよう。明暗を反転させながら、らせん状に上昇するタカ柱は世俗的欲望を昇華して、より高い世界のあることを想起させる
▼この島で一夜の宿をとると、羽づくろいをして、星空に明日を夢見る。夜が明ける直前、彼らは呼びかけ合って飛び立ち、群れをつくって新たな目的地に向かう。現在から未来へ架かる希望の虹を渡ってほしい
▼「タカドーイ・デンゴ」。(空)