行雲流水
2013年11月9日(土)9:00
「文化勲章」(行雲流水)
11月3日、文化の日。「国民の祝日に関する法律」に定められる祝日で『自由と平和を愛し、文化をすすめる』と規定されている。その日、映画俳優の高倉健は4人の受章者と共に天皇陛下から直接文化勲章を手渡された
▼文化勲章は春と秋の年2回授与される叙勲とは趣を異にする勲章で、年に1回芸術・学問分野で日本の文化の向上に功績のあった人に贈られるものである
▼皇居宮殿「松の間」での授与式を終えての記者会見で健さんは「日本人に生まれて本当に良かった」と素直に喜びを語ったという。映画の中では武骨で寡黙な侠客であることの多かった健さんらしい言葉だと思った
▼11月3日の祝日は、明治節といわれ近代日本の礎を築いた明治天皇の誕生を祝う日であった。太平洋戦争で負けた日本に乗り込んできたマッカーサーは、日本のそれまでの制度を根こそぎにし、連綿と受け継がれた精神文化にも手をつけてみたものの手に負えるものではなかった。明治節は文化の日として国民に深く定着している
▼人類学者で文化功労者でもある山口昌男は、日本人の思考様式には「祖先につながる志向があった」と指摘する。親授された文化勲章を胸にして日本人であることを誇りにする健さんの言葉はまさに日本に生を受けた者として祖先につながる喜びであると思える
▼5日には、文化勲章受章者・文化功労者が皇居に招かれての茶会があったようだが、健さんは風邪気味ということで欠席したとのこと。前例がないといわれる映画俳優の文化勲章受章を喜ぶ者としてはお茶会にも出てもらいたかった。(凡)