本体は変わらないのに表現する言葉が変わっただけで本体そのものまでが真新しい別物に変化したかのように錯覚することは不本意ながら常に起きている。この錯覚に便乗し気おくれなく声高に誇大宣伝するテレビコマーシャル商法は少なくない

▼言語学者西尾実氏は言う「事実が変わらないのにそれをあらわすことばだけかえそれにともなう既成の感情をあらためようとすることはことばの機能を逆用したごまかしにすぎません」（「民主社会のことば」）と

▼見向きもしなかった品でも名称表現新たに所有欲をそそる映像に有名芸能人やスポーツ選手の称賛推せんの言葉をかぶせて再登場させるとかなりの高率で売り上げが伸びるというご時世である

▼コマーシャルの一言一句に付和雷同し購買行動に駆りたてられる消費者が後を絶たないがゆえにメディアのコマーシャルは近年勢いを増してきているのか。国政選挙戦においてもコマーシャル手法を駆使しメディアに頻繁に登場する候補者が勝算を高めつつある

▼秒単位でかさんでいくコマーシャル料は並の金額ではないはず。財力乏しくなければ政治経歴や公約はメディアに乗せていかようにも誇大に宣伝することができ選良バッジを胸にすることも可能となる

▼普天間問題で政府が繰り返す「危険性の除去」の表現に見え隠れするのは県民にとっては「普天間機能の移転ではなく新機能がある別の基地を造るという話だ」「おんぼろになった軽トラックをダンプカーに代えろと言っているようなもの」（長野県中川村村長）と合致する。