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私見公論
2014年3月28日(金)8:55

宮古の肉用牛振興について考える②/砂川 辰夫

先輩方のノウハウ活かせ
私見公論87

 宮古の和牛繁殖経営における改良は、県・家畜改良事業団・民間の種雄牛や他県からの雌牛導入等で、増体・資質等の改良は三代から四代・五代層にさかのぼり、少なくとも血統の改良は全国レベルまで達したと思っている。

 しかし、市場をのぞくと交配および血統的には申し分のない子牛であるにもかかわらず、安値で販売される子牛は、見た目にも明らかに濃厚飼料の多給による肥り過ぎや病気したと思える虚弱体の子牛等、飼養管理のずさんさが浮き彫りになる。このような子牛を目の当たりにすると「もったいない」ことこの上もなく、方言で言うところの「な・ま・だ・ん」「ナマダンムヌ」「ダル」(怠け者)と牛に代わり言いたい。飼養管理さえ怠らなければ高値が付いたであろうと残念でならない。

 ちなみに、宮古島市・多良間村を含めた(24年度農業共済組合資料より)1年間で疾病や事故等、死亡・淘汰された牛は(母牛含む)約400頭余に上る。単純に現在の12月期の宮古家畜セリ市場価格の母牛も含めた全体の平均価格(1頭当たり48万7000円)で換算すると、およそ1カ月分、実に1億9000万円余の金額が水泡と帰したことになる。

 繁殖経営の中で、病気や事故は幾度となく遭遇する。生産農家にとって厄介な課題でもある。飼養管理を怠りなく、一生懸命治療したにもかかわらず出荷に至らず、仕方なく淘汰してしまうこともある。私が思うに、これは往々にして人災、いわゆる、畜主による油断と怠慢から起こり得る事故だと思えてならない。「あのとき、獣医師に診てもらっておけば」と悔やんだところでモ~遅いのである。

 子牛の過肥については、改良組合の記念誌にもあるように、発育を伴わない肥った素牛は肥育農家から敬遠されると明記している。

 子牛の育成は、無駄な脂肪を付けず、骨格を作り、丈夫な胃袋で食い込みを良くすることが肝要であるとし、以前から、単味飼料についてもそれ応分の効果はあるが、配合飼料の方がはるかに良いとある。特に、子牛の発育を良くするには、子牛専用の配合飼料の給与が肝要とある。ちなみに、私の経験からも生後3カ月間(モーレット)4カ月以降、出荷まで(バルギー)の使い分けで十分良いと思う。

 ある農家を伺うと安いからとフスマだけとか、配合飼料にさらに単味飼料を加えて給与している農家もいる。当然、過肥の状態であり、コスト高の牛である。畜産農家と飼料給与の話をするとき、「肥り過ぎないように調整し、給与しないと良い牛は作れないよ」と話すが、「ウダカリャーマイ、タカータカ、ウータームヌー」(肥っていても高く売った)と意に介さない。購買者と話をする機会が多々ある。子牛の肥り過ぎを必ず指摘される。

 私は、「脂肪が付いていても皆さんが高く買い上げるから」と返すと、「肉を作るのは肥育する俺たちであって生産農家は腹を作ればいいんだ(肋張・骨格)よけいな脂をつけるんじゃない」と怒られる。

 「300㌔の牛が高い」と言えば、宮古の畜産農家はすぐ濃厚飼料を多給する傾向にある。

 「アン・チャー・アラン・ニュー」(それは違う、そうじゃない)と声を大にしても聞き入れてくれないのが現状である。

 なぜ、子牛の肥り過ぎは良くないのか、子牛の時点で脂肪を付けると飼い直してもなかなか脂肪は取れないとのことである。肉販売において、高額の部位はロースの芯である。子牛の状態からの過肥は、そのロース部分に筋間脂肪が付き、肥育の段階で芯が小さくなることから嫌われ、素晴らしい良い子牛なのに高い評価を得ず敬遠されるゆえんである。改良組合の記念誌の中で、宮古は素牛生産地域であることを念頭に置いて、「牛は草で飼う」の原点に立って牛が好んで食う草作りに取り組むことが低コスト生産と、肥育農家のニーズに合った「宮古銘柄牛」の生産につながると明記している。昔からご指導を仰いで来られた先輩方の教えは10年、20年経っても色あせることなく、的を射ている。長年取り組んで来られた先輩方の教えは尊い。しかも現実的である。

 「も~一度」原点に立ち返り、記念誌をひも解いてみてはいかがなものか。

 経済的認識に立ち、子牛の付加価値を高め高値販売につなげようではないか。

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