行雲流水
2014年4月29日(火)8:55
「香りの文化」(行雲流水)
種の多様性は自然の豊かさであり、人間の文化を豊かにする。自生するのが少なくなったモロコシグサ(方言名ニーフニズ)を栽培して増やしている人がいる
▼彼の話によると、この植物の葉っぱはとても香りがいいので、以前は蒸して乾燥させ、軒下などにつるしておいた。また、女性は着飾って外出するときには、この葉っぱを懐に入れて、ほのかな芳香を漂わせていた。男性たちは、「マムヤの香りがする」と、褒めたたえたという
▼マムヤについてはこんなことが伝えられている。その昔、野城按司は、保良邑にいた絶世の美人マムヤにおぼれて、政務を怠り、邑を滅ぼしてしまう。マムヤも後に追放され、東平安名崎の洞窟に身を隠して世をはかなみ、機織りをして余生を送っている
▼美人も、人生いろいろである。世界の三大美女の一人に数えられるエジプトのクレオパトラは香料に大金をかけ、女の色香で、敵であるローマの要人たちを手玉にとり、ローマを混乱させた
▼現代、芳香療法(アロマセラピー)という療法がある。現代社会の持つ社会的病理によるストレスや精神病理などを芳香によって癒やそうというものである
▼われらのマムヤは、本来、純朴な女性で、それでいて香水などつけなくても芳香を思い起こさせるような美人であった。そして、「世の中を騒がせる自分のような人は二度と生まれることがないように」と祈る謙虚さのある、心優しい女性であった。ともあれ、馥郁たる「香りの文化」のゆえか、この宮古島には香るような美人が多い。