肉用牛今後の課題/砂川 辰夫
宮古の肉用牛振興について考える④
私見公論97
宮古の和牛繁殖、子牛生産においてはこれまで述べましたが、最も期すべきことは「母牛1万頭以上の保持」であり、宮古が安定した和牛産地として生き残りをかけ産地間競争に打ち勝つためにも維持していかなければならない絶対的頭数だと思う。
平成21年度の成雌牛(母牛)頭数は、1万663頭から平成25年度では8339頭と、実に2324頭の減少となった。(多良間含む)離農・高齢化・担い手不足が主たる減少要因の一つでもある。現在、宮古和牛改良組合の年齢別の割合では、70歳代が組合の32%を占め、高齢化は日々着々と進んでいる。ちなみに、30代、40代を合わせても13%でしかない。先に述べたように、後継者育成は一朝一夕にしてできるものではない。このことが喫緊の課題であり、何が必要か、何をどうすべきか、皆で英知を絞り、取り組むことが最大の課題であり、迅速に取り組むことと考える。夏場に向け、本来の子牛の価格は下降線をたどり、冬場に向け上げていくものの、全国的な子牛の生産不足も相まって、異様な高価格で推移している。繁殖農家にとって良いことではある。しかし、今後の宮古の肉用牛畜産振興状況からすれば、好調のように映るが長期的展望に立てば現状のままでの母牛減少では、決して安定的な母牛頭数を維持していける現況にはない。宮古の肉用牛振興今後の課題については、宮古和牛改良組合周年記念誌が参考になる。その中で記してある「先進的和牛生産地の構築とその要件8箇条」とは
(1)飼育頭数を一定水準以上に安定的に保つ
(2)高品質牛の生産を進めること
(3)牧草の生産基盤を強くすること
(4)飼育管理技術を高水準で定着させること
(5)農家の生産意欲が高く保たれること
(6)指導体制がしっかりしていること
(7)家畜市場が常時活気を呈すること
(8)農家の自営防疫意識の確立。
以上が今後の肉用牛振興について課題として掲げている事項である。中でも、家畜市場が常時活気を呈することについては、繁殖農家にとって家畜市場は子牛の最終的な取引場所であり、結果は農家経営の収益をも左右する。市場が活況を呈せば生産意欲は高まり、生産振興は進展する。市場のニーズを念頭に、牛つくり・売り場つくり・宣伝の強化に向け宮古全体が一丸となって取り組み、高品質牛を生産して市場の需要を満たし得る頭数を安定的に上場し購買者の定着化を図ることが肝要であると記している。そのためにも、「母牛1万頭以上」を維持していかなければならないのである。
「農」で生計を立てる。すなわち、これまでの畜産農家ではなく、畜産「業」として、農を生業(なりわい)とし、農業で一つの経営体企業として、畜産業を経営する後継者、担い手が残念ながら少ない。そのような観点からすれば、規模拡大を図り、ハウス施設野菜・果樹生産・葉タバコについては、新規就農者・担い手等、これらが充実しつつあるものと思える。残念ながら、畜産業はまだまだ現状では少なく、規模拡大が図られていないのである。
宮古島で生産し、出荷した子牛は購買者が肥育し、それぞれの各県においてさまざまなイベントや、共進会等が開催されている中で、高い評価を受けさまざまなところで好結果を残している。宮古島産和牛は、肉質・増体ともに誇れるまでになった。和牛生産に係る者として思うことは、おいしい「宮古牛」が商標登録もされており、自信と誇りを持ち、うまい牛をどんどん消費する環境、おいしい物・良い物へこだわる・挑戦する気概・それを評価できる環境でありたい。「タカカリば、ファールン」(高いから食べない)あるいは、食べたことはないという環境ではなく、牛飼いであるなら、せめて月1回ぐらいスーパー・お肉屋さん・焼き肉店で自ら食する。皆で「ヤパーヤパ・マーンチー・ンマムヌ(やわらかくて本当においしいもの)」と言ってほしいものだ。