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行雲流水
2014年7月1日(火)8:55

「キジムナー」(行雲流水)

 河童(かっぱ)は悪さもするが、どこか憎めないかわいさがあって、ひとの世で愛されている。河童は身近にいて、キュウリが好きなので、キュウリを巻いた寿司をかっぱ巻きという。作家の芥川龍之介は河童の絵を好んで描いたので、彼の命日は「河童忌」である

▼沖縄のキジムナーやブナガヤも河童の一種だと考えられる。ブナガヤの多く見られるのは芭蕉布の里、喜如嘉で、かつて山城善光さんの観測所があった。ただ厄介なことは、ブナガヤは心のきれいな人にしか見られないということである

▼わがキジムナーについては、船越義彰の『きじむなあ物語』がある。キジムナーは言う。「われは木の精、風と土の木とまぼろしの不可思議な融合をとげたもの。古き遠き日、人間の自然へのおそれと素朴な祈りと、生活のなかのユーモアが純粋なりし頃の残像のひとひらである」

▼キジムナーは心優しいが、人間の出す「屁」だけは嫌いで、棲家である古木を破壊されると激怒する。「非常時」とか「死の礼讃」とかいう言葉は理解を超えており、「官という人間のつくった掟が怪物のような面相で人間から人間らしさを奪い取っていた」ことも不思議に思えた

▼やがてイクサがやってきた。戦場の死は賛美されるようなものでなく、醜悪で無残なものであった。多くのキジムナーは人間とともに命を落とし、虚空の最も深い色として溶解していった

▼キジムナーは真の平和を知っている。人間は、遠い昔日のように、再びキジムナーの心が読めるようになるだろうか。

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