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私見公論
2014年7月18日(金)8:55

宮古の水産業の将来を考える/長嶺 巖

「木を見て森を見ずからの発想の転換」⑤
私見公論103

 私の家に祖父が明治42年6月17日に沖縄県宮古島廠(宮古支庁)から交付された第227号漁業鑑札の木札がある。漁業鑑札という焼印木札は明治時代の漁業許可証で、祖父が漁業鑑札を沖縄県から受けたのは若干16歳であった。鹿児島県出身の鮫島幸兵衛が明治39年に池間島でかつお漁業を開始してから3年後の明治42年、漁業技術を習得した池間島の漁民は共同出資してかつお漁船を購入し組合船としてかつお漁業がスタートした。

 またこの年に池間漁業組合が設立されるなど池間島の夜明けを連想させる画期的な年でもあった。祖父が漁業鑑札を受けた背景には漁業監札がなければかつおの餌が取れなかったことと併せて漁業権を管理する漁業組合が設立されたことに起因するとおもわれる。明治の漁業法が沖縄県に適用されるのは明治12年からであるが、宮古島は明治36年に人頭税が撤廃されるまで薩摩の二重支配のもと水産業が発達しなかったため、法律の適用も遅れてきたものと推測される。

 祖父は夏場はかつお漁の餌取りを行い、冬場は、ヤーマ漁(八重山出漁)でアギヤー(追い込み網漁)を行っていたようで、サバニがひっくり返っても漁業鑑札だけは手離さなかっと懐述していた。そのくらい漁業者が漁業を行う上で鑑札は宝物だったようである。

 明治の漁業法は資源を保護し漁業生産力の発展に結びつける漁業の民主化を目的に法律がつくられ漁業する権利を保障する内容となっている。現在の法律も大して変わらないが、その目的は漁業権の管理主体として漁業協同組合に委任され組合員の漁業を営む権利、漁場の民主的利用を制度化したことにあります。

 宮古地区3漁協(宮古島漁協、伊良部漁協、池間漁協)が共同管理利用する共同漁業権22号の第一種共同漁業権の漁業種類は海藻類4種、ウニ漁業、イセエビ漁業、ナマコ漁業、タコ漁業、貝類はシャコガイ漁業、タカセガイ漁業、ヤコウガイ漁業、マガキガイ漁業、サザエ漁業などとなっている。

 資源保護を目的に、産卵時期は禁漁(イセエビは4月1日から6月30日、漁獲サイズは18㌢以上)(シャコガイは6月1日から8月31日まで禁漁、漁獲サイズはヒメジャコ8㌢以上)、サザエは口径3㌢以下、マガキガイ(テラジャ)は殻長4㌢以下は取ってはならないとなっている。そのほかにも禁漁期間、体長制限の規制がかけられているが割愛する。

 共同漁業権漁業を営む組合員は漁業権の管理費として年間1000円の行使料の納付が義務付けられているほか、法令、規則に違反した場合は一人当たり1万円の過怠金を科することができるとなっている。特定区画漁業権の内容は、モズク養殖、ヒトエグサ養殖、キリンサイ養殖、クビレズタ養殖、シャコガイ養殖と区域を決めて行使網数も漁協の総会で特別決議を行い、県知事から免許を受けて養殖をを行っている。

 近年は宮古島市海業センターの種苗生産技術の向上によりシャコガイの種苗生産、タイワンガサミの種苗生産放流、モズク種(培養種)の供給・採苗など「つくり育てて取る漁業」が発展してきた。その結果、平成24年度の宮古の漁業生産額10億円のうちモズク養殖1200トン1億3千万円、クルマエビ60トン2億6千万円ヒトエグサ(アーサ)8トン8百万円と生産額の50%を養殖漁業が占めている。共同漁業権漁業の生産額は採貝漁業で1100円となっている。

 宮古島の海岸線の総延長は155㌔、漁業者が利用できる共同漁業権の範囲はその3倍である。池間島の北方(ヤビジ)には大小200ものサンゴ礁が発達し、魚介類の宝庫でもあるが、サザエやシャコガイは乱獲気味であり保護区を設定することを検討していきたい。私たち漁協組合員は自然の恵みに感謝しながら、資源を保護、育成することが漁業生産力の向上につながることを改めて認識する必要があると思う。協同組合の精神「一人はみんなのためにみんなは一人のために」。

 最後になりましたが、漁協組合員は前述したとおり、漁協の総会で厳しい規則を設けて資源管理に取り組んでいるが、一般市民は、サニツ行事など干潮時には海のものは自由に取ってたべる習慣が残っている。漁業者の持続的再生産、後継者育成のためにも資源管理に協力をお願いしたい。
 (ながみね いわお・池間漁業協同組合代表理事組合長)

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