行雲流水
2014年9月20日(土)8:55
「敬老の日」(行雲流水)
「老人一人が亡くなることは図書館が一つなくなるようなもの」。国連のアナン元事務総長が老人の知識をそう例える部族がアフリカにいると話し、その能力を高く評価した。日本の敬老のことわざは「亀の甲より年の功」が知られ、長年の経験を尊ぶ。宮古の先人は「バカムノータヤヲファイ、ウイピトゥーヤウムクトゥヲファイ(若者は力を、年寄りは知恵を活用して)」と格言を残した
▼「敬老月間」の今月は、各地で「敬老会」が盛大に開催されている。同月間は長寿を祝うだけでなく、先輩たちの築いた功績を振り返る機会でもある。宮古の精神風土は「アララガマ魂(負けてたまるか)」に代表される。明治、大正、戦後(昭和)と貧しい時代だったが全員が知恵を出し合い協力して「アララガマ」と働き、子弟をりっぱに育てた。宮古の年寄りは全員「アララガマ大賞」ものだ
▼昔の農村部には多くの若者が農業に従事し、活気があった。共同体意識が強く御嶽(ウタキ)は祭祀(さいし)に参加する人でにぎわっていた。おばあさんたちは愛情深く近所の子供に昔話を聞かせた。自然に生える薬草を利用する知恵も共有した。活気に満ちていた農村は、時代の流れとともに高齢化と過疎化が進み老人世帯が増えた。現在、農村では家業と古里の文化を継ぐ人の確保が課題になった
▼安倍政権は「地方創生」を重要政策に打ち出した。政策の推進では農村を担う高齢者の健康長寿や活躍の後押し、若者を農業に引き込む施策展開、昔ながらの独自文化の薫る住み良い活力あふれる農村づくりに力を入れてもらいたい。(松)