行雲流水
2014年10月16日(木)8:55
「住めばみやこ」(行雲流水)
歌手前川清が地方を訪ね歩く「タビ好キ」というテレビ番組がある。先ごろの舞台は宮古島だった。ヤギやらサンシンやらサトウキビ畑やら、宮古島で生まれ育った者には見なれた農村風景だが、プロデューサーにとっては珍しかったようだ
▼そのなかで、新潟県出身の佐藤さんという方が登場する。定年退職後移り住んできたという。60代とお見受けしたが、すっかり地域にとけこんでいて、何十年も前から住んでいるかのようだった
▼手作りの住宅と手入れの行き届いた家庭菜園や花壇。そこに流れるサンシンの弾き語り「池間 ヌ シュウ」。ゆったりとした空間とのんびりした時間が流れ、田舎の雰囲気がただよっていた
▼北国から南国へ来て戸惑うことが多いのでは、との想像は杞憂(きゆう)だった。気候どころか、近所の人びとや田舎暮らしにもすっかりなじんで「宮古は住み心地がいい」と語る
▼テレビを通してふるさと新潟の知人友人へ送る〝お便り〟でもあったのでしょう。ふと、移住者の口コミによる情報発信は観光誘客に少なからず貢献しているにちがいない、との思いが頭をよぎった
▼宮古を訪れる外来者にいい印象を持ってもらうことは、とても大切なことだ。観光資源は空や海だけではない。サービスや食べ物など、その土地ならではの〝おもてなし〟の心にふれると、また訪ねたくなる。リピーター率は観光地の将来を占うバロメーターだ、とも言われている。東京都民の4割は「田舎に住みたい」との願望を持っている、との調査結果もある。