行雲流水
2014年12月11日(木)9:00
「観光と味覚」(行雲流水)
師走の那覇、市場通りでのこと。〝ひやかし〟気分で、食べ物中心の土産品店に入った。新商品らしき品を手にとって製造元や原材料などの表示をながめていると、売り子が飛んできた
▼いきなり「それ おいしいですよ」と言う。思わず商品を元の場所にもどし、急いで店を出た。売り子はけげんな顔をしている。不機嫌そうな客の様子が気になったのでしょう。なんでぇ、親切に勧めたのに、と言いたそうな表情だった
▼おいしいかどうかは客が決めるもの。客の立場になって勧めるなら、おいしさのヒントくらいは教えてほしいものだ。こってりしているとかさっぱりしているとか
▼もっとも、微妙な味を言葉で伝えることは難しい。味の文化は奥が深いだけに、言語による表現は難しいのかもしれない。とはいえ、「おいしいですよ」だけでは押し売りに等しい
▼〝あしてびち〟を初めて見る観光客は、「おいしいですよ」と言ってもなかなか箸をつけようとしない。が、「お口に合うかどうか分かりませんが、おひとついかがですか」と勧めると食べてみる気になるようだ。食べてみなければ「おいしさ」が分からない。消費者への〝おもてなし〟は、ことばから始まるのかもしれない
▼勧め方も大事だが、味そのものはもっと大事だ。宮古を訪れた観光客へのアンケート調査で、評価の低かった項目は「食事」だったことが気になる。一流の料理人を招くか育てるかして、行列のできる店が何軒かあってもいいのでは。