行雲流水
2015年3月5日(木)8:55
「宮古人のルーツ」(行雲流水)
総合病院の医師は多忙のようだ。若い医師は、初診者と向き合うのでもなく、パソコンを見ながら質問して短時間で診断(中間)をくだす。昔の医者は、爪の色を診たり、顔色をうかがったりして時間をかけて診察していたものだが
▼もっとも、待合室で記入した問診票の項目はかなり多かった。このデータがパソコンに入力されていて、追加質問だけで絞り込みが容易になっているのでしょう。パソコンの医療用ソフトの開発が進んでいる証左かもしれない
▼先週の本紙に、木村亮介氏(琉大大学院医学研究科准教授)の「ゲノムから考える琉球列島の先史」に関する記事があった。ゲノムとは遺伝情報のこと。遺伝子を構成するDNAの塩基配列からいろいろな情報が得られるという。そういえば問診票にも、親族の病歴に関する項目があった
▼DNA鑑定は病気の診断、医薬品の開発だけでなく、民族のルーツなどの歴史分野にまで適用範囲が広がっているようだ。〝目からうろこ〟の感がした
▼木村氏によると、日本民族は縄文人と渡来系弥生人の混血。本土と琉球の違いは混血の度合いの差にすぎない。沖縄本島、宮古、八重山の人々は祖先を共有しているが、宮古の遺伝子には本島との分化が見られ、八重山は本島に近いという
▼地理的には宮古が本島に近いのに、遺伝的には八重山が本島に近いのはなぜか。木村氏は、宮古は一時的に非常に小さな集団サイズを経験したのではないかとの仮説を示したが、その背景は未解明のままだ。津波だろうか。先史時代の謎が増えた。