行雲流水
2015年4月2日(木)8:55
「新年度」(行雲流水)
宮古の方言でいう「スディ水」とは、旧暦元旦に神前にささげる若水のこと。「スディがら」はセミやヘビの抜け殻。新学期が始まる4月は、昔風にいえば「スディ水を浴びて脱皮した児童生徒たちが新生に目覚める時節」であろうか
▼1886年、明治政府は「会計年度」を4月1日~3月31日と定めた。イギリスにならって導入したという。大多数の民間企業の「事業年度」もこれに準じている。だが、農業年度は10月~9月だ。その上、作目ごとに大豆年度や小麦年度などがある
▼1年の期首・期末の捉え方は多様だ。国際標準としての暦年は便宜上必要だが、すべての営みが太陽暦にしたがっているわけではない。国や地域によって歴史や気象環境が異なるからであろう
▼フィリピンでは〝真夏〟が2回あるという。最初は北上する太陽が真上を通る時。二度目は北回帰線(北緯23度)で折り返した太陽が南下する時だ。地球上の生き物は、それぞれの場所の気象環境に適応する工夫をしながら生きてきた
▼季節の変わり目には植物や動物界に変化が起こる。人間界も例外ではない。人間の内面でも、情緒不安定になりがちだという。ある作家は、プロポーズするなら秋ではなく春がいいと言った。同じ動揺でも、春は上昇志向、秋は安定志向へ傾きがちだという
▼新年度は古い殻から脱皮する契機かもしれない。新しい発想・仕方・仕組みを考えるチャンスと捉えたいものだ。古人いわく「新しいぶどう酒は、新しい皮袋に盛るべし」(新約聖書「マタイ伝」)。