行雲流水
2015年5月12日(火)8:55
「お母さん」(行雲流水)
5月の第2日曜日は「母の日」。家族のために頑張っている母への感謝の気持ちを伝える日である。本紙では、8日、「母の日」特集号が組まれ、子供たちから母への感謝の手紙やほほ笑ましい似顔絵が多数掲載された
▼子供たちは、改めて、大好きなお母さんを描いたり、無償の愛で自分たちを育んでいる母親の姿を見つめて、母とともにあることの喜びをかみしめ、感謝の意を深めたに違いない
▼サトウハチローの詩集『おかあさん』を思い出す。「弱くて 強くて 不思議なお母さん/悲しい時は そんなに泣かず/うれしい時には涙をこぼす/母さんそよ風 柳の小枝/くすくす笑いの こぬか雨」
▼サトウハチローを記念して福岡県丸岡市では「日本一短い母への手紙」を募集しているが、作品には次のようなことばが綴られている。「お母さん、知らないうちにかぶっていた夕べの布団、ありがとう」。「あなたからもらったものは数多く、返せるものはとても少ない」。「野を駆けて行ったままの5歳の私がいるんだね。惚け、ぼけてていいよ、お母さん」
▼人には父母がおり、父母にもそれぞれの父母がいる。これを10代までさかのぼると1024人になる。30代までさかのぼると10億人を超える。この命の連鎖が1回も途切れなかった故に人は、今に生きている。「世界にはたくさんの人がいるけど、私とお母さん出会ったんだね。良かったね」
▼今、生きていることの尊厳性と、奇跡とも言える母との出会いを大切に懸命に生きることが、母への最大のプレゼントとなる。