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行雲流水
2015年6月2日(火)8:55

「アメリカの軍需産業」(行雲流水)

 広瀬隆著『アメリカの巨大軍需産業』は膨大な資料を用いて、アメリカの軍需産業の驚くべき実態を明らかにしている。冷戦終結後、さらにはベルリンの壁が崩壊し、東西対立の構図が消滅するのを機会に世界の軍縮が進展することが期待されたが、そうはならなかった

▼アメリカの軍需産業は大連合に向かい、30兆円もの膨大な国防予算を背景に、軍と政界を巻き込んで肥大化し、マーケットを世界に広げている。大きい会社にもなると、16万人もの従業員を抱えており、軍需産業が経済全体の中に、しっかりと組みこまれている

▼この体制では、戦争や紛争が起こると、景気が上昇、終結すると失業者が増えることは必然である。そのために、戦争や紛争は、緊張を口実に、あおられ、つくられる

▼悲惨なのは紛争地帯である。軍需産業のマネーゲームの結果として、正義の名の下に殺りくが行われている。武器を作れない人々が、アメリカやロシアをはじめ先進国製の武器で殺しあっている。業界には、「紛争の挑発と拡大に寄与する行為には、国籍を越えて協力しあう」というルールがあるという

▼広瀬隆は明確に断言する「沖縄の米軍基地は、アメリカの国家安全保障のためにあるのではなく、軍需産業のためにある

▼アメリカの世界戦略は、一貫してアメリカ自身の国益の追及であり、それを自国の国益に照らして検証し、国益を守る主張ができないことが、戦後日本の悲劇である。広瀬は結語に書く「軍需産業は、アメリカのすべての魅力を台なしにする」。

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