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私見公論
2015年8月21日(金)9:01

【私見公論】基幹産業としてのサトウキビ振興と宮古の農業振興を考える①/宮城 克浩

株出しによる生産量アップに向けて


 宮古の農業は、サトウキビを基幹作物として肉用牛との複合経営を基本に展開している。

 また本土の端境期をねらった冬春期出荷用として、沖縄県の戦略品目であり拠点産地にも認定されているゴーヤー、とうがん、カボチャ、オクラなどの野菜類や県内でも生産量の多いマンゴーなど熱帯果樹の生産も多く、作物の多様化が進んでいる。

 これらの作物を育てる宮古の土壌は、土層が浅く保水力が弱いため、夏季の少雨の際には干ばつ害、また毎年のように襲来する台風などの気象災害、さらには病害虫の発生などの生育障害もあり、農業をとりまく自然環境は厳しいのが現状である。

 このような中、農業基盤整備事業など国、県による各種事業の積極的推進や地下ダム利用の促進など生産性向上のための条件整備が順調に進展しており、今後の農業振興への期待も大きい。

 サトウキビ生産をみると、相次ぐ台風による茎の折損害により、大幅に減収した2011/12年期を除く過去5年間の平均生産量は32万7千トンで県内でも生産量の多い地域である。サトウキビの作型は、数年前までは夏植えに偏った作型であったが、株出し不萌芽の原因である土壌害虫の防除に有効な薬剤が開発、活用されたことで株出し不萌芽が改善され、株出しが増えてきている。2010/11年期までは1割程度であった株出しの収穫面積は、現在では4割を超えている。株出しは、春植えや夏植えのように植え付けのための種苗費や圃場準備、植え付け費用などの諸費用が無いため低コストな作型である。このことは生産者の所得向上につながるとともに、2年に1回収穫の夏植えに対して、毎年収穫できるので土地利用効率が高く、収穫面積の拡大による生産量の向上にも有効な作型であると言える。

 しかし一方では、夏植えにくらべて夏季の台風や干ばつなどの気象災害に弱く、またサトウキビの重要病害である黒穂病に感染するリスクが高いなど、生産を阻害する要因も多いことから、生産の安定と反収の向上が課題である。サトウキビ生産者の所得向上および生産量の向上に有効な株出しから、これまでの夏植えに偏った作型へ後戻りしないためにも、株出しの生産安定と反収向上に向けた取り組みが必要であると考える。

 厳しい生産環境の中で生産に励んでいる生産者にたいして釈迦に説法とは思うが、株出しする際の反収向上のための要点について私の知見を以下に述べる。①新植(春植え・夏植え)の際には、株の欠損がでないように株の確保に努める。具体的な方策としては、植え付け時の種苗を多めにすること、また株の欠損が発生した際はあらかじめ準備しておいた補植苗で補植を行う。②前作を収穫した後は、可能な限り早めに株出し管理(施肥・中耕等)を行うことで生育を早めて、台風や干ばつに遭遇する夏季までに茎を大きくしておくことで気象災害を少なくする。

 ただし12月、1月の低温時期は、品種(農林15号など)によっては萌芽が悪く、生育が劣り反収が少なくなるので、品種を選んで株出しを行う。③地下株が萌芽し、分げつして茎が出揃う栽培初期の除草を徹底することで、十分な茎数を確保する。④黒穂病の感染リスクを少なくするため、黒穂病に強い品種を活用するとともに、新植の際は感染の恐れがある株出し圃場から採苗しない。⑤黒穂病に感染履歴のある圃場へ新植する際は、薬剤による種苗の浸漬処理を行う。⑥収穫機械で土壌を踏圧し土壌が硬くなった圃場では、サブソイラなどで畦間の心土破砕を行い、悪くなった土壌の物理性を改善する。⑦収穫機械で収穫した際に高刈りした圃場では、減収につながる地下株の高い位置からの萌芽を防ぐため、株揃え機械で株揃えを行う。

 以上が株出し増収のための方策の要点であるが、まずは②の収穫後は可能な限り早めに株出し管理を行うことを実践していただきたい。これら方策のすべてについて、個々の生産者が実践することは容易ではないと思う。生産者が、それぞれの経営の中で工夫しながら実行可能なことから実践することで、多少でも生産量の向上と所得の向上につながることを期待したい。

 宮城克浩(みやぎ・かつひろ)1960年生まれ。那覇市小禄出身。83年琉球大学農学部卒業後、84年沖縄県農業試験場企画管理室採用。86年同さとうきび育種研究室、88年同宮古支場作物研究室、91年同名護支場作物研究室、94年同さとうきび育種研究室、2000年同さとうきび育種研究室長兼農林水産省さとうきび育種指定試験地主任、07年農業研究センター宮古島支所作物園芸班長、10年農業研究センター作物班長としてその間さとうきびの品種育成研究に従事。12年同研究企画班長を経て、15年現在宮古島支所長。

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