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私見公論
2015年10月23日(金)9:01

【私見公論】基幹産業としてのキビ振興と宮古の農業振興を考える②/宮城克浩

年内操業の効果について

 2014/15年期の製糖操業が、26年ぶりに沖縄製糖管内において年内に開始された。2007年から3年間、現職場で勤務していた際、年内操業の可能性と有効性について言及し推奨してきた者の1人として、年内操業に踏み切った製糖工場や関係機関の努力には敬意を表したい。年内操業に至った理由として、ここ数年の増産と早期高糖品種の普及による成熟の前進化があげられている。

 ここ数年の株出しの増加による収穫面積の拡大に伴う増産と「農林27号」などの早期高糖品種の普及など、年内操業実施に向けた条件が整ったものと認識している。ここで今後も年内操業が継続されるように、再度その有効性についてサトウキビ振興と宮古の農業振興との関連から私見を述べる。

 夏植え中心で株出しが少なかった頃までは、夏植え収穫後の畑は次の夏植えに向けて更新していた。この場合、生産者や製糖工場としては、成熟が進み糖度が高くなる製糖期後半に収穫したほうが所得の向上につながる。このことが年内操業に踏み切れなかった理由の一つであると考えている。

 しかし株出しが増えた今日では状況が一変してきている。これまでの製糖操業は1月~3月に行われ、その期間、生産者は収穫作業に追われるため、株出し管理は収穫を終えた4月以降に偏っており、このような株出し管理作業の遅れが株出し反収の低さ、不安定の原因の一つと言われている。株出し反収の向上、生産の安定化のためには、前回のコラムでも述べたように収穫後、可能な限り早めに株出し管理を行うことが必要である。すなわち早めの管理によって生育を早め、台風や干ばつに遭遇する夏までの生育期間を長くすることで植物体を大きくして、夏植えと同様に気象災害を最小限にすることで株出し反収の向上、生産の安定化を図っていくことが重要である。

 株出しが増えて収穫面積が拡大した今、年内操業による収穫の前進化によって株出し反収を向上させることで、増産につなげていくことを今一度認識したい。「増産したから年内操業するではなく、増産のために年内操業をする」と考えてみてはどうだろうか。とは言っても12月は低温条件で萌芽環境が厳しいため、既存の栽培品種は2月、3月に株出ししたほうが反収が多いことも事実であり、低温株出し性を具(そな)える品種の開発が急がれる。

 では既存の栽培品種の中で12月に収穫して株出しする場合はどの品種がいいのだろうか。栽培品種の中では、比較的に低温株出し性に優れる「宮古1号」、「農林22号」、「農林26号」および「農林28号」などが増収効果が高いことがこれまでの試験結果から分かっている。また収穫面積の7割を占めている早期高糖品種の「農林27号」も有効である。逆に早期高糖品種で糖度的には12月から収穫が可能な「農林15号」は、低温株出し性が劣るため、12月、1月の株出しは極端に反収が少なくなるので、2月以降に収穫して株出しするほうが望ましい。品種によって収穫、株出しの適正時期が違うことを念頭におき品種を選択して増収につなげてもらいたい。

 年内操業の効果はサトウキビだけに止まらない。宮古は本土の端境期をねらった冬春期出荷用として、露地野菜のカボチャ、施設野菜のゴーヤーやトウガンの生産が盛んである。年内操業によって畑が空けば、早い時期からカボチャの植え付けが可能となる。カボチャは出荷時期が遅れれば価格が下がるとのことであり、冬春期の早い時期に出荷ができれば価格的に有利である。カボチャとの輪作は土地生産性の向上による農家所得向上にも有効である。

 サトウキビ収穫の早期化が、冬春期の労働競合の緩和につながることで、サトウキビ農家や園芸農家双方の生産向上に結びつけば、地域全体の農家所得向上につながる。また土地の有効利用による所得増が農業後継者の育成にも結びつき、ひいてはサトウキビの生産安定にもつながるのではないだろうか。地域農業振興のためにも、年内操業は毎年継続することを願ってやまない。

 次回のコラムでは、収穫のさらなる前進化、すなわち夏植え型秋収穫・株出し栽培について私見を述べてみたい。

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