【私見公論】宮古水産業の現状/中村雅弘
就業者数、生産額とも衰退
市制施行10周年を迎え、宮古島市は今後第1次産業と観光振興を基盤とした島づくりを進め「心踊る夢と希望の宮古島」に向かって進めるとしている。農村部は農村部なりの、漁村部は漁村部なりの、都市部は都市部なりの整備を進めていきたいと。
宮古における昨今の水産業を取り巻く現況は(全国的な傾向かもしれないが)水産資源の減少、漁業環境の悪化、後継者育成の課題等きびしい状況である。
それでは宮古における水産業の現状はどうなっているかみてみる。宮古農林水産センター発行の宮古概観、宮古の農林水産業によると漁業就業者数448人(平成20年漁業センサス)、昭和55年には、伊良部町だけでも約1000人はいた。30年間で約2分の1に減少している。また、水産業生産額は、平成20年11億7900万円、平成25年8億4160万円と約3億4000万円約29%の減少となっている。ちなみに伊良部町の昭和53年度の水産業生産額は55億600万円であり、宮古島市の平成25年度のサトウキビ生産額約67億円、葉タバコ約23億円、肉用牛約24億円となっている。水産業就業者数、生産額でみるかぎり、いかに宮古の水産業が衰退し、後継者育成もきびしい状況であることがみられる。
そのような現状にあり宮古の水産業はどうなるのか。
平成17年第2次沖縄県農林水産業振興計画において、宮古圏域の水産業振興は、現在地域特性を生かしたパヤオ、カツオ、追込網漁業およびモズク養殖など多種多様な漁業が行われているので、地域特性を生かした水産業の振興を図るため、漁港、漁場等の生産基盤整備を推進する。また、流通、販売体制の強化を図り、販路の確保、拡大に積極的に取り組む「売る漁業」を推進する。漁業者等に対して、各種学習会や巡回指導を実施することにより、漁業者の資質向上、資源管理に対する啓発を図るとともに、漁業者後継者の育成を行う。また、地域資源の利活用や都市との交流を促進するため、体験漁業等ブルーツーリズムを推進するとし、海面漁業は漁船漁業の振興を図るための技術指導を行うとともにタカセガイ等の放流による資源添加を推進する。また、栽培漁業の振興、地域への浸透を図るため、宮古島市栽培漁業センターおよび関係機関に技術協力、支援等を行う。海面養殖業は養殖の振興を図るため、生産、流通が円滑に行われるよう、生産漁家に対する技術指導、系統団体の指導を強化するとともに、地域で生産される海藻類や魚介類の流通、加工施設等の整備を行う。また、特産品である海ブドウ養殖の定着を促進する。そして、重点振興品目として、モズク、海ブドウ、ヒトエグサ、キリンサイ類、マグロ類、タカセガイ、シャコガイ類を指定して振興を促進するとしているが、なぜか、カツオ、グルクンはみられない。以上が沖縄県の宮古圏域における水産業振興施策である。
宮古島市の振興計画は、第1次宮古島総合計画で産業振興の目標に農林水産製造業等と観光産業とが連携し新たな産業の創出に努めるとしている。
そして、平成24年、第1次宮古島市水産振興基本計画でこれからの水産業を振興していくにあたっての基本的方針を策定している。
その中で、地域特性を生かした接続可能でもうかる漁業を基本理念とし、年間総生産額を15億円の目標としている。その振興施策として、(1)水産資源の保全・回復、(2)漁業者所得の向上、(3)就業者の確保、育成、(4)活力ある漁業集落づくり、(5)ぎょしょく活動の推進、(6)漁業協同組合の機能強化の六つを具体的展開の内容とし、計画目標達成に向けて検証への取り組み体制として、宮古島市水産振興戦略会議を設置して施策の実施を図るとしている。
それでは、宮古島市の予算でどのように振興施策が取り組まれているか。平成27年度予算334億3000万円の中で水産業費は、2億3000万円率にして0・6%である。振興計画の目標達成検証の組織としての宮古島市水産振興戦略会議の組織はみられない。ちなみに、宮古地区農業振興会、宮古地区糖業振興会、宮古和牛改良組合等は予算でもみられる。水産業関係者のがんばりを期待する。離島漁業再生事業、漁村地域整備事業、浜の活力再生プラン等、年間総生産額15億円の目標達成に向けて沖縄県農林水産業振興計画、宮古島市水産振興基本計画を活用し、行政、漁業者、漁業協同組合の一層の取り組みを期待したい。