世界王者へ視界は良好/ボクシング・フライ級
比嘉大吾(宮工卒)、着実に前進
8戦8勝の無敗。プロデビュー以来全戦でKO勝ちを収めている。序盤から押しまくる攻撃型ファイターは昨年、世界ボクシング評議会(WBC)ユース・世界フライ級タイトルマッチを制し、ユース世界王者の座までたどり着いた。しかし目標はあくまでユースではない世界王者。「勝ち続けたい」-。闘志みなぎる表情で熱く語った。
浦添市出身の20歳。同市の仲西中を出た後、宮古工業高校に進学し、元プロボクサーの知念健次さんの指導を受けた。才能はすぐに開花して1年のころから県内のタイトルを奪取。プロ注目のボクサーに育った。
その姿は、元世界ライトフライ級王者で13連続王座を防衛した具志堅用高会長の目にも留まった。夢にまで見た憧れのボクサーのスカウトを受け、二つ返事でプロ入りを決めた。
デビュー以来、勝ち続けていた比嘉に好機が訪れたのは昨年7月。若手選手の育成を目的に制定されているタイトルマッチ「世界ユース・フライ級王座」の挑戦権だ。相手はタイのコンファー・CPフレッシュマート。試合会場は対戦相手の地元タイだった。
デビュー以来14連勝中のコンファーを相手に比嘉は序盤から攻めた。左ジャブで距離を取りながら効果的なボディーで相手の体力を奪い続けたが、会場は不利な敵地。ポイントは6回まで相手にリードを許す苦しい展開を強いられた。
アウェーの雰囲気に飲まれそうなときに鼓舞してくれたのが具志堅会長だ。「お前は行ける。KOはこの回しかない。行け」との指示を受け、7回は精魂を込めて攻め続けた。最後は強烈な左フックを決めて初タイトルを手にした。
11月の防衛戦にも勝利して初防衛に成功すると、比嘉の名前は一気に内外に知れ渡った。自身、世界戦に向けて着実な歩みを感じる1年となった。
昨年を振り返り、「何よりタイトルが取れたことがうれしい。1年を通して集中できた」と話す。「自分の成長を感じることができた1年でもある。ぼくの中にはいつも宮古島のアララガマ魂がある。だから攻めるボクシングを続けることができた」と誇った。
さらに比嘉は「原点は宮古工業のボクシング。知念監督にはプロみたいな教え方をされたが、それが今に生きている」と話した。
今年21歳。「具志堅会長が世界を獲った年齢で自分も並びたい。そのために勝ち続ける」と誓う。「食生活を含めて、さらにボクシングに磨きをかける。そうすれば体も意識も変わってくると思うから。世界王者になりたい」-。2016年も目が離せない。