行雲流水
2016年2月2日(火)9:01
【行雲流水】「ティダピルマ」
『あかねちゃんのふしぎ』でふくふく童話大賞を、『真夜中バースデー』で北日本児童文学賞優秀賞を、『ティダピルマ』で小川未明文学賞優秀賞を受賞するなど、数多くの賞を受賞、現在琉球新報児童文学賞選考委員を務めるもりおみずき(友利昭子)さんが、昨年末『あかねちゃんのふしぎ』に次ぐ第2作品集『ティダピルマ』を出版した。その中から「ティダピルマ」を読んでみた
▼主人公のワタルは両親と東京で住んでいるが、都会の生活に違和感を覚えて、なじめないでいる。彼は、伊良部に住む祖父母を訪ねるが、オジイはベッドで横になっていて、ただうつろである。「オジイの病気は治っているんだよ。でもタマス(魂)を落としてしまっているさ」とオバア
▼ワタルは、オジイにかわいがられていた日々を思い描きながら、オジイが心身の健康を回復することを強く願う。ここから物語は感動的に展開される
▼タマスを肉体から放して想像力を広げるワタルの「タマス遊び」。オジイの腕にある傷の秘密。昼間の一瞬、時間の裂け目ができてあの世とこの世が一つになる「ティダピルマ」。タマスが集まるというウパルズウタキのタマスツリーなどの概念を効果的に構成してつくられた幻想的な世界は現実以上にリアリティーを感じさせて感動を呼ぶ
▼なお、物語の根底には、自然や伝統文化の尊重、平和の思想が流れていて、個性的な魅力ある文体で描かれている
▼友利昭子さんは当地における「児童文学の種まく人」である。さらに、大輪の花を咲かせてほしい。