【人生雑感】親と子の間に物事に対する考え方・価値観の対立が生じた場合におけるよい解決法
日本親業協会親業インストラクター 福里盛雄(ふくざと・せいゆう)
1 親子の価値観の対立とは
親と子が、物事に対する考え方や評価を異にする場合を親子の価値観の対立という。
親は、自分の正しいと信ずる価値観を、自分の子も持って生きてもらいたいと常に考えています。子に対する愛が強ければ強いほど、そう思うのです。その人の持っている価値観が、その人の生き方の選択を左右します。従って、その人の価値観はその人にとっては重要な働きをします。人は、どのようにして価値観を修得していくのでしょうか。生まれながらにして持っている価値観もあるが、大部分の価値観は、社会生活をしていく過程で修得していくものと考えます。社会生活を体験する中でその価値観を変革したりして、正しい価値観を身につけていくものと考えます。
正しい価値観は、その人の人生経験の豊かさの象徴であり、反社会の価値観は、その人の人生経験が花も咲かず、実もつかない暗黒な孤独の象徴です。
2 親は、自分が正しいと信ずる価値観を土台にして、子も生きていくことを望みます。
親は、自分の価値観に、子の価値観を強制的に変えさせてはならない。例えば、子が頭の髪を染めることを禁止したり、評判の良くない友達と交友することを禁止したりすると、子は、これは私の髪であり、私の友人だよ、自分の髪をどうしようが、私が誰を友人に持とうと私の自由でしょう、と反論をします。そして、あまりうるさく言うと、子は登校拒否したり、家出したりする場合もあります。そこで、親は、自分の価値観に、子がその価値観を変えるために、自分の価値観に基づいた模範行為を示さなければなりません。
例えば、親は人間にとって結婚生活は、素晴らしいという価値観を持っています。ところが、子は結婚に対して否定的価値観を持っています。親は、結婚は困難もあるが、やっぱり結婚生活は、人の生活の幸せの土台だと信じています。そのために、親は自分の子が結婚して人並みに幸せになることを望んでいます。「百聞は一見にしかず」、という格言の通りに、親は、結婚生活がどんなに素晴らしい幸せなものであるかを、毎日の結婚生活でその模範を示す必要があります。親の毎日の幸せな結婚生活を手本にして、子は自分の結婚に対する否定的価値観を、親の結婚肯定の価値観に変えてくる可能性があります。また、親は自分の価値観に子がその価値観を変化させるように、良いコンサルタントにならなければなりません。親はコンサルタントになって、いろいろなアドバイスを示し、最後の選択は、子自身に委ねることです。どこまでも子の人生は、子のものであるから、それを親の生き方と同じ生き方、考え方で生きていくように強制してはなりません。親子は、血のつながりの一番近い間柄であり、お互いが相手の幸せにとって密接な関係にあります。親は子が幸せな人生を歩んでくれることを、誰より強く望んでいます。そのためには、親は子の人生の模範・手本とならなければならないのです。そしてそのために、良いコンサルタントとなる必要があります。子に対して人生の模範者・お手本となるためには、まず、親自身がその役目を果たすことのできる人間に成長すること、この意味においても、子育ては親育てである。親は「神よ、私に変えられることを受け入れる勇気と、私に変えられないことを受け入れる平穏と、そして変えられることと変えられないことの違いを知る叡智を授け給え」(ヤベツの祈り参照)と祈らなければなりません。