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行雲流水
2016年3月24日(木)9:01

【行雲流水】「ヤマグ考」

 昭和20年代、家庭での日常会話は方言だった。小学校の「週訓」には、しばしば『標準語励行』が登場した。その週は「方言札」が出て、方言を使う人に順送りで首からぶら下げさせていた

▼休み時間は〝鬼ごっこ〟ならぬ〝方言札ごっこ〟だった。方言札を渡された人は、授業時間中の先生の話はうわの空。次の休み時間での作戦を考えていた

▼方言を標準語(風)に直訳する作業も盛んだった。「つめたい」は方言の直訳語「ヒゴロイ」で通用した。もめたのは感動詞。足をふまれて発した「アガッ」は標準語かどうか。先生の裁定に持ちこまれ、「方言」に分類された

▼「ヤマグ」という言葉は頻繁に使われたが、仲間内ではなぜか「標準語」扱いだった。最近、図書館で「宮古スマフツ辞典」(与那覇ユヌス編著)をみつけて「ヤマグ」の項をひくと、山ごもりすること けちん坊 仕事に後ろ向きのさま と出ている。小学生はもっぱら「けちん坊」の意味で使っていた

▼ついでに「伊良部方言辞典」(富浜定吉編著)にあたってみると、山ごもり 悪い奴 けちんぼ とあり、その由来は「昔、人頭税を逃れて山ごもりして強盗や盗みをしたことから出たことば」とあった。ヤマグは、ヤマグムイがつづまったものだった

▼では、ヤマグムイがなぜ〝けちん坊〟か。人頭税を取る側の声か、連帯制で納める側の声なのか。社会、集落、個人など立場が違えば、それぞれ違う心象風景がある。鳥の目でながめると、〝痛税感〟が高じると人心は荒廃するとの共通項が見えてくる。

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