【人生雑感】子に対する両親の家庭教育の鍵は、子の潜在意識を高めること
日本親業協会親業インストラクター 福里盛雄
1 親の家庭教育において培った子の潜在意識は、子の生涯を左右します。
辞書によると潜在意識とは、心深くひそんでいて自覚されない意識を言う。幼児は、大好きな親の常々言い聞かせていることばや、生きざまを手本にして形成された潜在意識を土台に自分の人生を創造していきます。その意味では、親の幼児に対することばや、毎日の生活態度は、その善し悪しにかかわらず子供の潜在意識として、その子の心に奥深くしみ込んでいます。人の潜在意識は、その人の心の内にいる「もう一人の自分である」と考えることもできます。
ある教育学者は、潜在意識の働きについて、「一生の運命を決定するような左にするべきか、右にすべきか、という大事な瀬戸際には、必ずといってもよいほど幼いときから言われてきた、親の言葉が浮かんでくる」と言っています(菊池藤吉・家庭教育の鍵頁)。
親は、子に対して良い潜在意識を持たせるためには、子に対して、あなたは豊かな素質があり、誠実で忍耐強い子である。だから、困難を乗り越えて自分の能力を発揮する力があると親が言い聞かせていると、その子は、そのことば通り、社会のために価値ある仕事のできる人間として成長していくと言われています。
2 子の潜在意識を高めるために、親は、どのように子と接すればよいのでしょうか。
他の兄弟姉妹や友人と比較してはいけません。その子をそのまま受け入れることです。他の兄弟姉妹や友人と比較することは、その子に劣等感を持たせたり、ある場合は、優越感を持たせたりします。他人と比較することは、相手次第でその子を相対的に評価することになるからです。その子に自己に対する自尊心を持たせる潜在意識を形成するためには、その子を一個独立の人格者として絶対的評価をしなければなりません。
他人と比較することによって、その子を過小評価すると、その子に劣等感の潜在意識を持たせた場合、どうせ自分は無能力だから、社会に役立つことはできないに決まっているし、他の人々もそう考えているという潜在意識を持つ傾向があるのではないでしょうか。ある研究調査によると、「少年院に収容されている少年に共通していることは、幼少から劣等感の潜在意識を持っている少年が多い」と指摘している専門家もいます。このように、親の子に対することばや態度は、子の潜在意識を形成する大きな要因となり、子の物事の考え方、そしてどんな行為をすべきかを左右する働きをすることが理解できたと思います。
親の言葉は、両刃の剣に例えることもできます。子の心の傷を癒やし、子に夢と希望を与えるエネルギー源となり、あるときは、子に劣等感の潜在意識を挿入する場合もあります。大きな船が、その小さなカジによって自由自在に大洋の荒波を乗り越えて目的の港に安全に到達するように、親の言葉も、常に確信と愛をもって子供と対話しておけば、その言葉が、子がどうすべきか迷うときには、大いに役立ちます。
また、それとは反対に、親のことばによって、心が傷つけられ、親に対して感謝するどころか、産みの親を憎み暗い人生を、子に歩ませてしまう場合もあります。私たち親は、まだ子は幼児だから理解する能力はないだろうと思って、安易に言葉を使います。ところが、その言葉が子の潜在意識として、幼児の心の底にしみ込んで子の成長と共に存続し続けるのです。それは、普通は表面には表れないが、人生の危機に直面したとき、自分の出番を察して、その人の心の決断を左右する原動力となります。よい温度と鮮度のよい愛の言葉で子の潜在意識を高めるように努力することが、私たち親の子に対する教育義務であり、誇りでもあります。