【私見公論】『備え』あれば憂いなし/玉那覇 通男
沖縄公庫のセーフティネット機能
「備え」について
宮古経済の安定・発展に向けたキーワードを漢字一文字で表すと『備(そなえ)』だと認識している。「地方創生」は人口減少への備え、宮古島市市制施行から10年が経過し、ポスト合併特例債等への備えも重要度を増している。景況が堅調な今のうちに、課題解決に向け「備え」よう。
セーフティネット機能
セーフティネットとは、「安全網」と訳され、網の目のように救済策を張ることで、安全や安心を提供するための仕組みのことである。いざという時の「備え」と言い換えることもできる。離島県である沖縄は、景気変動、自然災害や急激な社会的・経済的環境の変化等による影響を大きく受けることから、政策金融機関である沖縄公庫は、「特別相談窓口」を機動的に開設し、影響を受けた企業や県民に対するきめ細やかな対応に努め、新規のご融資、既にご利用いただいた借入金の返済条件緩和等を行い、セーフティネット(以下、「SN」)としての役割を発揮してきた。
SN機能の発揮例
①米国同時多発テロ(平成13年9月)の風評被害を受けた観光関連事業者等を支援。
②リーマンショック等により影響を受けた中小企業者等を支援。
③東日本大震災(23年3月)の復旧・復興に向けた政府の対策と連携し、県内事業者等を支援。特に、迅速な融資対応で菊農家への金融支援を実施した。
④台風災害時の対応について、宮古圏域の葉たばこ農家に対する農林漁業SN資金(無担保無保証)等による支援実績は、23年度の春台風では新規貸付が119先・7億円弱。昨年度の台風6号関連では、貸付制度の1先当たり融資限度額の制約を受け、融資総額は1億円強に止まったが、返済条件緩和を含めると84先(農家の約6割)に支援を実施した。
SNの究極の姿
SN資金の浸透に伴い、借り手に学習効果が現れるようになった。観光関連事業者を例に挙げると、米国同時多発テロの風評被害を受けた際には、不安感が先行し、「転ばぬ先の杖」としてのSN機能が求められ、公庫にも限度額いっぱいまで申し込む事業者が多かったが、リーマンショック、東日本大震災では、インパクトの差もあったと考えられるが、そこまでの状況には至らなかった。
本当に困った時には公庫が対応してくれるので、ぎりぎりまで自助努力で踏み止まろうとする姿が見受けられた。この「学習効果」こそがSNの究極の姿であり、イベントリスクに耐え得る持続可能な経済構築のお手伝いをしてきたことになる。
農業に関しては、自然災害は無いことが望ましいが、不幸にして発生した場合でも農家の皆様が安心して本業に専念していただけるよう、公庫もSN機能により、今後もサポートしていく。
久松ご融資
宮古支店勤務は10年ぶり二度目である。当時の忘年会で翌年の目標のコメントを求められ、「沖縄公庫宮古支店独自制度を創設『久松ご融資』!」「初夢か残念…」とオヤジギャグで答えた覚えがある。農林漁業SN資金は全国並びの制度であるが、今年度から沖縄公庫独自制度『沖縄農林漁業台風災害支援資金』の創設が認められた。地域限定(宮古圏域)・作物限定(葉たばこ)、貸付限度額は300万円だが、全国並びの600万円に上乗せし、900万円までご利用できるように拡充された。初夢は10年後に正夢となった。
玉那覇 通男(たまなは・みちお)1960年生まれ。那覇市泊出身。東京都立大学(現・首都大学東京)卒業・86年修了。同年沖縄振興開発金融公庫入庫。日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)審査部に出向。シンガポール大学に県費留学。14年宮古2市村との助言業務協定締結を担当。15年宮古支店長就任。