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私見公論
2016年7月15日(金)9:01

【私見公論】汝の足元を掘れ、そこに泉あり/玉那覇 通男

沖縄公庫による「地方創生」支援


 「地方創生」元年

 「まち・ひと・しごと創生法」に基づく県内各市町村の「人口ビジョン」・「地方版総合戦略」(以下、「総合戦略等」)が出揃った平成27年度は、「地方創生」元年でした。沖縄公庫は、宮古島市、多良間村を含む14市町村の総合戦略等策定に委員等として参画し、支援しました。

 地方創生支援を先取り

 沖縄公庫は、設立(昭和47年5月)以来、「地方創生」支援を先取りする形で、より豊かで特色ある持続可能な地域社会を築く取り組みを市町村と一体となって推進してきました。平成19年度には組織横断的な専担部署(現・地域振興班)を新設。市町村が実施する地域振興プロジェクトに対し、同部署が構想・企画段階から助言することを目的に、9市町村と「助言業務協定」を締結しています。宮古2市村とは26年5月に締結(前任部署で小職が担当)。多数の委員会に委員等として参画・支援しています。

 産官学金労言

 地方版総合戦略の策定に当たっては、住民をはじめ、「産官学金労言」(産業界・市町村や国の関係行政機関・教育機関・金融機関・労働団体・メディア)の参画が重要とされています。なお、地域金融機関、政府系金融機関等の知見等を積極的に活用することも有効とされています。なぜ、「金」だけが二度登場するのでしょうか。地域の実情等をよく知り、地域の経済・産業と運命共同体である地域金融機関は、積極的関与が求められているからです。なかでも、民間投資を支援する沖縄公庫の政策金融は、公共投資等の推進と並び沖縄の振興開発における「車の両輪」に例えられます。

 金融ノウハウ等の活用例

 沖縄公庫が有する長期金融のノウハウおよび幅広いネットワークを活用した支援例として、助言業務協定締結第一号である北谷町のまちづくりプロジェクトを挙げることができます。
 同町美浜地区のアメリカンビレッジの開発では、バブル崩壊後で企業誘致が思うように進まなかったところ、公庫の支援等を機に、企業進出に弾みがついた。また、その後のデポアイランドやフィッシャリーナ地区の開発では助言協定を締結し、金融ノウハウを活用した助言・情報提供、進出企業への資金供給を行い、特色あるまちづくりに成功している。
 公庫の長期金融ノウハウ等を宮古圏域においても積極活用してまいりたい。

 足元を掘れ(宮古島市)

 地方創生は、地方自らが地域資源を掘り起こし、活用する取り組みが必要とされています。ニーチェの言葉「汝の足元を掘れ、そこに泉あり」の如く、宮古島では地下水や天然ガスが湧き出て、地下水はやがて伊良部島にも届く。農業先進地でエコアイランドを推進する「宮古らしさ」をこれまで以上に施策の前面に打ち出してほしい。天然ガスの利活用を例に挙げると、観光分野での利用は、補助金等を有効活用できれば、ホテル等の民間事業者単独でも事業化の可能性が高いと思われるが、農業分野での利用は、行政が手を携えて推進することが求められよう。

 水を求めて(多良間村)

 村人口の長期目標である千人台の維持は、可能と考える。宮古・本土直行航空便の拡充に加え、今後の下地島空港の利活用の進展次第で、その波及効果が多良間村にも及び、同村を訪れる観光客数の増加が期待できる。シニア層やファミリー層は飛行機に3回は乗らないが2回は乗る。今のうちに受け入れ態勢を整備する必要があろう。6月に開講した「村営学習塾」にエールを送りたい。教育は水と同じだ。かつては深刻な水不足で、現代では、教育の機会を求めて村民は島を出る。教育環境の整備が最重要である。常駐講師等による講座に加え、敷設中の海底光ケーブル「先島ループ」(沖縄本島と多良間村を高速ブロードバンドで直結)を活用したインターネット講座による「送水」も有効であろう。

 将来への架け橋

 「人口ビジョン」は2060年、「地方版総合戦略」は2019年を目標年次としています。遠い先に感じられますが、伊良部大橋は要請から開通までに40年を要しています。宮古圏域が取り組むべき「将来への架け橋の設計図」となる総合戦略等を着実に実行し、堅固な橋を築き、渡り始めよう。(沖縄公庫・宮古支店長)

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