行雲流水
2016年7月28日(木)9:01
【行雲流水】(寛容と秩序)
「寛容さを大事にしよう。同時に法と秩序を守ろう」。米国共和党大会でトランプ氏が行った大統領選指名受諾演説の一節だ。これは日本国憲法(第3章国民の権利及び義務)の精神でもある
▼当り前過ぎて、聞き流しがちだ。だが、具体的な問題に直面する現場では、両立は容易ではないようだ。現に沖縄本島北部の東村では、米軍演習場のヘリパッド建設をめぐってもめている
▼反対派は座り込みで建設資材搬入を阻止、推進派は機動隊を導入して反対派を排除した。寛容を大事にすれば「話し合い」、法と秩序を守ろうとすれば「排除」になる。話し合い派は「権力の濫用だ」と言い、排除派は「権利の濫用だ」と言う
▼村長は「米軍演習地の過半を返還させるため、ヘリパッド建設を容認する。ただし、夜間訓練や集落上空の飛行はやめてもらいたい」との立ち位置。知事は「基地の整理縮小には賛成だが、オスプレイの発着場建設には反対だ」との姿勢
▼村長の対応は、村の将来と集落の日常生活への配慮をふまえた現実的な対応のように思える。知事の姿勢は、高度な政治的駆け引きのようでわかりにくい
▼村長は足を地につけた「可能か不可能か」をさぐり、知事は思考中心の「是か非か」を問題にしているようにみえる。本来、この二つのテーマは別々の問題のはずだが、一つの土俵でごっちゃになっていることが混乱を招いているのでは。是非論で押すと「寛容」は後退し、「法と秩序」が前面に出る。トランプ氏の演説も東村の現実も、他人事ではなさそうだ。