行雲流水
2016年8月16日(火)9:01
【行雲流水】(古い手帳から)
思いがけず、高校時代の古い手帳が出てきた。日常のことや友人のこと、学校生活の様子が偲ばれて、面白い
▼青少年赤十字のうた『空は世界へ』が書かれている。「空は世界へ続いている/空は世界を抱いている/みんなごらんよあの空を/空は僕らの私らの/心よこころよ青年赤十字」。盛んだった赤十字の活動は、生徒たちの博愛心や理想主義精神を育む大きな力になったに違いない。うれしはずかし。何よりも、男女が手をつないで踊るフォークダンスにみんな心を奪われていた
▼その頃、情報が乏しかったせいもあって、生徒たちは、政治家のアジ演説や、文化講演に興味を持った。大濱信泉元早大総長の講演からは「人間がどこで生まれるかは劇的偶然である」ということばがメモされている。鰺坂二夫教授は話している。『学規』。「一、深くこの性を愛すべし。一、顧みて己を知るべし。一、学芸を持ってこの性を養うべし。一、日々新面目あるべし」
▼友人と歌った歌や、教えてもらった歌が書かれている。「丘は花盛り」、「山の彼方に」、「新雪」、「バージニア」、「人を恋うる歌」、「別れの曲」などである
▼異性のことが暗号で記録されている。解読すると、「〇〇のヴィーナスは美しい」。「〇〇は片思いの彼女を垣根越しに見に行った」。「〇〇君失恋、12月21日」
▼啄木のうたが書かれている。「世の中の明るさのみを吸うごとき黒き瞳の今日も目にあり」。「新しき明日の来るを信ずという自分の言葉に嘘はなけれど」。青春時代に出会う。また、楽しからずや、である。