行雲流水
2016年10月4日(火)9:01
【行雲流水】(あんもち)
地球は回り、時代は変わる。科学技術の発展は目覚ましく、生活が便利になった。反面、問題点も意識されるようになった
▼昔、子どもだった高齢な仲間たちは、過ぎ去った「よき時代」のことや現代の世相をよく話題にする。彼らは、あん餅が大好きな世代である。同期のグラウンドゴルフ大会の時に出されるあん餅や生菓子を、みんな喜んで食べる。日頃のメタボ恐怖症から解放されるひと時である
▼「食」は習慣性が強いので、餅を食べずに育った親の子どもはその美味さを知らずに一生を過ごす。かわいそうである。サトウキビもまた大変おいしい食べ物であった。畑から盗んで食べた思い出がよく話題になる。スナック菓子で育った子供にはそのおいしさは分からない。また、顎(あご)に支えられた強い歯を使う必要性が低いので顎が退化、誤飲や悪い歯並びの原因になっているという
▼スーパーで、いろいろな食べ物が簡単に手に入るようになって便利だが、その分、「おふくろの味」が影をひそめ、親子の情愛が薄くなり、問題生徒が増える一因にもなっている
▼人を強迫観念に落とすサプリメントの宣伝は度が過ぎる。「質のバランスと量を考えて、自然食をとるのが一番だ」と医師は語る。その際は、科学の成果が十分に活用される
▼将来、人間はロボットといろいろな場面で競合するようになるかもしれない。そんな時でも、生き物である人間は、「食を楽しむ」ことができることでロボットに勝る。象徴的にたとえて言えば、「あん餅よ、称えられてあれ!」。