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私見公論
2016年11月11日(金)9:01

【私見公論】宮古から世界へ展開『ワールド・ワイドー』/玉那覇 通男

シンガポールが教えてくれること

○第三の故郷シンガポール

 最終回は、宮古にその座を譲るまで筆者の第二の故郷であったシンガポールが教えてくれることについて、リクエストに応え、私見を述べたい。(筆者は平成元年に国立シンガポール大学(「NUS」と略称)に県費で短期留学)

○建国の父LKYの逝去

 建国50周年を見届けるかのように昨年逝去した、リー・クアンユー初代首相(「LKY」と略称)の訃報に接し、同氏の自叙伝を読み返した。半世紀先の世界情勢を見通した慧眼に畏敬の念が強まると同時に、畏怖の念も強まった。

○子孫に美田を残す

 国民一人当たりGDPで同国が日本を追い抜いたフローに目を奪われがちだが、ストック(シンガポール一国を株式会社に例えると、その株式時価総額)の最大化こそが、同国民の究極の目標に思えてならない。人口構成比が最も高い華人の伝統的な考え方「子孫に美田を残す」が背景にある。
 同国の知人に再会したら、勤め先の株式を取得し社長に就任していた。「会社をさらに発展させ、引退時に持株をより高値で譲渡し、キャピタルゲインを得たい」と意気込みを語ってくれた。従業員によるまたはオーナーではない経営陣による経営権取得は、同国では中小・小規模事業者でも一般に行われている。
 事業承継が喫緊の課題である宮古経済界の参考になるかもしれません。

○主要産業は人材育成

 ノーベル賞を受賞した大隅栄誉教授は、数十年前の研究成果が受賞対象と語っている。シンガポールはバイオ関連の先端技術で世界の叡智を集めており(「人材のハブ化」)、同国がノーベル賞受賞者を輩出することは時間の問題であろう。
 同国では、世界最高水準の教育を自国で受けられることも主要産業と言える。天然資源が乏しい点は、同国も宮古も同じだ。専門学校以上の高等教育機関の宮古設置が急がれる。

○ダイバーシティ適合

 ダイバーシティとは、人種や性別などの多様性を受け入れ、広く人材を活用することで生産性を高めようとするマネジメント用語である。
 シンガポールは多民族国家(中国系・マレー系・インド系他)で、国民は公用語の英語に加え、出身民族の言語も自在に操れる。成長著しいBRICSの主要国(中国・インド)やイスラム世界(マレー系はイスラム教徒で、ASEAN約6億人の約4割は同教徒)のマーケットとのリンケージもなされている。
 LKYは「日本の文化は素晴らしくも、実に異質である。しかし、文化の異なる多くの民族によって構成される世界に適合するには日本人はさらに変わらなければなるまい」と、日本のダイバーシティ適合の遅れを看破している。
 クルーズ船寄港回数の大幅増に伴うインバウンドや人手不足への対応で、宮古においてもダイバーシティ適合が急務である。

○島国の経済レベル向上策

 LKYは、小規模な軍用飛行場であったチャンギ空港の国際空港化と2本の滑走路建設を英断。数次の拡張を経て、世界屈指の「航空ハブ」を構築した。
 本県の幹部はLKYの持論「島国の経済レベルはその港湾や空港のレベルを超えることはできない」をよく引用する。確かに、本県の有効求人倍率は港と空港を有する圏域(八重山・宮古)から先に1倍を超えている。
 下地島空港および周辺用地の今後の利活用は、宮古圏域のさらなる発展の起爆剤となる計り知れない可能性を秘めている。

○ワールド・ワイドー

 先月末、「世界のウチナーンチュ大会」で来沖した米国在住の親戚を案内した。セルラースタジアムのスタンドで式典に臨席すると、華人は別格として、約42万人の世界のウチナーンチュとのネットワークが、世界に誇れるものであることを肌で感じた。
 宮古2市村による、海外姉妹都市との交流や中高生海外ホームステイ派遣事業にエールを送りたい。宮古から世界へ展開しよう「ワールド・ワイドー!」。
(沖縄公庫・宮古支店長)

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