行雲流水
2016年11月12日(土)9:01
【行雲流水】(メディアリテラシー)
11月9日午後、アメリカ大統領選挙の開票速報にくぎ付けになった。NHKBS1がアメリカのテレビ局からの中継をダイレクトに放送する壮大な番組だった。クリントン候補とトランプ候補の鎬(しのぎ)を削る得票争いはまさに選挙がいかに躍動するドラマであるかを改めて知ることになった
▼開票が終盤になってくるとトランプ陣営の集会の様子が繰り返し放映される。それでも当選確実の知らせはまだでない。息詰まるような雰囲気の中で静かに登壇したメッセンジャーは「ヒラリー・クリントンがドナルド・トランプ(の勝利)を認めると電話してきた」と告げた。大団円である
▼翌10日、早朝のNHKにチャンネルを合わせる。ここで不思議な表現に出会うことになった。「世界に衝撃」「国の融和は図れるか」「日米関係は?」テレビ画面の字幕である。選挙の結果は昨晩決まっただけでまだ何も動いていないにもかかわらずテレビは将来のことを先取りする
▼そればかりではない、小さな字幕では「驚くべき番狂わせ」ときた。これには笑ってしまった。「トランプは大統領にふさわしくない」そういう先入観をもった報道としか思えないのだ。選挙期間中のトランプ氏の言動については、彼の人格の一部を知る材料にはなったがそれが大国の大統領としての欠陥要因になるとは思えない
▼選挙に勝つためのパフォーマンスと大統領になったときの職責は区別して考えるべきだと思う。日米関係を論ずるにしても先のことではないのか
▼アメリカの大統領が代わったからと言って直ちに世界に大変革が起こるとも思えない。英国のEU離脱のあの大騒ぎの時と同じように。