行雲流水
2016年11月15日(火)9:01
【行雲流水】(山田八郎―無限の環)
「恵子美術館」は、全国でも珍しい超現実(シュールレアリスム)・幻想美術を中心とした私設の美術館として、1998年に、詩人で画家である山田八郎、垣花恵子夫妻がそれこそ心血を注いで開設した本格的な美術館であった
▼展示作品は、恵子が国際展や全国公募展で受賞した大作等のほか、日本シュールレアリスム画家の草分け的存在である岡田徹をはじめ「美術文化協会」や「山田コレクション」の友人美術家たちの多彩な寄贈作品に彩られた
▼美術館を訪れた人々が共通して感心したのは、山田が、一つ一つの作品を丁寧に説明、加えて、誰とも親しく語り合い、強烈な印象を与えたことである。多くの子どもたちは「怖い絵だ」と言いながらもその魅力を感じとり、創作意欲を高揚させ、館内で作品制作に挑戦した。このように皆から愛された美術館であるが、山田が病気で亡くなり、眼に不自由な恵子一人で、維持、管理することは無理で、一昨年閉館になった
▼恵子は、このたび、山田を惜しむ友人たちの追悼文や本人の作品、資料を集成、『山田八郎-無限大の環』を出版した。優しく誠実で、真面目一筋、純粋だったと言われる山田さんが偲ばれる。山田は恵子の詩と絵画の最大の理解者であり、恵子が大好きであった。二人の奇跡とも言える愛の物語が胸を打つ。彼はまた、沖縄の復帰運動やハンセン病問題のためにも尽力した
▼この書は、山田がよき人生を送ったことを証言する
▼「無限大の環に還っていった山田と恵子は一つになったの」と恵子は語っている。