行雲流水
2016年12月10日(土)9:01
【行雲流水】(ことば)
「感情や思想を伝える」のが言葉であることは言うまでもない。言葉は音声や文字で伝えられ社会に共通する意味を持つものでなければならないこともまた当然であろう。音声で表現される言葉は同じ意味で使われるにしてもその抑揚によって事の軽重を左右することもある
▼漢字や仮名文字で表現された言葉は読むことができ、意味を理解できることが必要だしある程度の想像力を求められる。古来、言葉は言霊(ことだま)ともいわれ、ひとたび発せられると事実として成り立つこともあって重いものであった
▼しかし、昨今の日本では言葉を弄ぶ風潮がメディアを介して広がっているのではないか。その最たる事例が「現代用語の基礎知識選ユーキャン新語・流行語大賞」なるものである。12月1日に「大賞」とトップ⑩が発表されたがその中には疑問を抱かせるような言葉が選定されていた
▼新語でもない、流行語とも言えない言葉をあえてトップ⑩入りさせ物議をかもした選考委員に興味を持ったし、主催者はいかなるものか興味をそそられた
▼「現代用語の基礎知識選」と擬人化された「現代用語の基礎知識」は書店では雑誌扱いされている『自由国民社』の出版物であり『ユーキャン』は学校法人格のない通信講座やソフト販売を業とする通販会社である。メディアが騒ぐ新語・流行語大賞なるものは出版会社と通販会社が提携するイベントに過ぎない
▼言葉を重い意味での「ことだま」ととるか、軽く「言の葉」と考えるかいずれにせよメディアに左右されない言葉に対する自分なりの確かなものだけは持っておきたい、と考えさせられた「新語・流行語大賞」である。