行雲流水
2016年12月15日(木)9:01
【行雲流水】(日ロ首脳会談)
日ロの首脳会談が始まる。極東ロシアの経済開発と北方領土問題解決の糸口を見つけるための会談だ。経済協力だけなら妥協は容易だが、領土問題がからむと一筋縄ではいかないだろう
▼日ロ間の国境は、最初は「日魯通好条約」(1855年)で択捉島とウルップ島の間に引かれた。次いで「樺太千島交換条約」(1875年)で日本は、ウルップ島からカムチャツカ半島までの18島を「譲り受ける」かわりに樺太全島を「放棄」した
▼その後、ポーツマス条約(1905年。日露戦争の講和条約)で日本は樺太の南半分を獲得。1945年の太平洋戦争終戦時には、ポツダム宣言受諾後の8月28日にソ連軍が国後島・択捉島に武力侵攻、占領したという経緯がある
▼1951年のサンフランシスコ講和条約では「千島列島、南樺太の放棄」が明記された。日本は「千島列島」に「北方四島を含まず」と解釈。ソ連は「含む」として実効支配を続けて現在に至っている
▼過去の交渉では、「返還」か「引渡し」か「譲渡」か、言葉使いでもめた。返還なら、日本にとっては「主権の回復」、ロシアにとっては「主権の放棄」を意味する。譲渡はプレゼントを意味し、引渡しは取引を意味し、いずれも両国の国民感情には「理不尽」と映った
▼今回は前車の轍を踏まないように、4島での「共同経済活動」という舞台を設けてせめぎ合うようだ。たとえ首脳同士が合意したとしても、両国の国民感情が治まるかどうか。両国の首脳発言に秘められた真意と、それを伝えるメディアの語法に注目したい。