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私見公論
2016年12月25日(日)9:01

【私見公論】宮古島市は自然保護行政を充実させてください/仲地邦博

 6月に「大野山林」、8月に「宮古諸島の固有種」、10月に「サシバ」について書かせてもらいました。今回は宮古諸島の自然保護・保全のあり方について書かせてもらいます。

 「野鳥の会」や「サンゴ礁ガイドのなかまたち」や「海の環境ネットワーク」などの民間団体もそれぞれの分野で頑張っています。しかし、いずれもボランティア団体であり、資金・人員の制限があり、思う存分の活動は不可能な状況です。また、横の連携が少なく、統一的な活動ができていません。民間の方々には、連絡会を作ることを呼びかけます。

 宮古島市は自然保護行政の基本政策を作って、大きな費用を必要とするものや自治体でなければできない仕事をやっていただきたいと思います。

 例えば、与那覇湾の利・活用です。2012年7月にラムサール条約に登録されたが、看板が数カ所に立ったくらいです(民間は野鳥やマングローブの観察会を実施)。他の地域では例えば、宍道湖ではシジミ、荒尾干潟では海苔、豊岡市や大崎市ではコウノトリやマガンのために減農薬で育てた米などがブランド化され、通常より高く取引されている。またラムサール条約登録地の生き物を展示、観察できる施設を作り、観光客の誘致に努めている。宮古島市はまだプランの段階のようだが、たとえ遅くなっても、ぜひ作って欲しい。

 なぜ登録直後にタイミング良く施策が取れなかったのか調べてみて、唖然としました。ラムサール条約や自然保護を担当する環境衛生課自然保護係はたった4人だけで、その内訳は庶務が一人、リサイクル担当が一人、非常勤が一人です。ということは自然保護の担当者は実質一人だけということです。一人だけで多岐にわたる自然保護行政ができるわけがありません。予算総額は確認できませんでしたが、形式的に自然保護係を作っただけのそしりは免れません。あと数人の担当者、できれば専門家を増員しなければいけません。

 まず国内希少野生動植物種(種の保存法に基づいて指定され、個体の捕獲・採取、譲渡等が原則禁止の種)の担当者です。宮古諸島では動物種はキンバト、ヨナグニカラスバト、オオタカ、ハヤブサ、ミヤコカナヘビ、ミヤコサワガニの6種、植物種はホソバフジボグサの1種です。これらの動植物をモニタリングして保護する専門家が必要です。

 また宮古諸島の固有種を保護する専門家も必要ですが、上記の国内希少野生動植物種の担当者が兼任する方が合理的でしょう。宮古諸島固有種に爬虫類のミヤコカナヘビ(絶滅危惧ⅠA類)、ミヤコヒメヘビ(絶滅危惧ⅠB類)、ミヤコヒバァ(絶滅危惧ⅠB類)の3種、宮古諸島と八重山諸島の固有種にはキシノウエトカゲ(絶滅危惧Ⅱ類)の1種です。また宮古諸島と八重山諸島の固有亜種にサキシマキノボリトカゲ(準絶滅危惧)、サキシマスベトカゲの2種がいる。両生類では固有亜種のミヤコヒキガエル(準絶滅危惧)、宮古と八重山諸島の固有亜種にサキシマヌマガエル(宮古、八重山諸島の固有種)がいる

 次に宮古島市の保全種のモニタリングと保全の担当者=専門家が必要です。2001(平成13)年に動物を78種、植物を56種、保全樹を60種指定していますが、モニタリングされていません。中には絶滅した種や枯れたしまった樹もある一方、ミヤコサワガニのように指定しなければいけない種もいるので、調査と見直しが必要です。

 色々と保護の必要な種を挙げてきましたが、その種だけを狙って保護対策をすれば、保護完了というわけにはいきません。その種の餌となる生物、繁殖に適した場所なども必要になります。つまり、その種の生息に適した環境そのものを保全しなければなりません。これから新しく保全地域を指定するには費用と手間がかかります。国(与那覇湾、池間)や県(伊良部島、狩俣・島尻)によって既に指定されている鳥獣保護区と宮古島市自然環境保全条例によって指定された特別保全地区(フディ、大浦湾のパナリ、東平安名崎のパナリ、大野山林など)をモニタリングし、法律や条例を適用し、立ち入り禁止区域などを設ければ良いと思います。それ以外にも赤土の海への流出、農地改良などによる湿地環境の消失も大きな問題です。湿地でなければ生息できない

 最後に以上のことをコーディネイトする自然保護の責任者と天然記念物などの他の担当課・係と連絡・調整する担当者も要るので、4~5人の担当者が必要になるはずで、予算もそれなりに増やさなければいけません。

 宮古島市で、これから成長が期待される産業の一番手は観光産業でしょう。観光の目玉は自然、特に美しい海です。宮古島市の発展のためにも、積極的に自然を美しく保つ必要があります。しかし、宮古諸島は全てが小さな島です。島の自然は壊れ易いし、壊れた自然を元に戻すのはほぼ不可能です。自然が壊れないような自然保護・保全行政を、望みます!

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