行雲流水
2017年1月7日(土)9:01
【行雲流水】(酉)
今年は十二支の10番目、酉(とり)年です。なんだかお酒でも入っていそうな文字の形ですがニワトリ(鶏)のことです。ということで年の初めでもあることから、昭和26年乾元社発行の南方熊楠全集第2巻『十二支考』から「鶏に関する伝説」を拾ってみました
▼洋の東西から数多くの伝説を集めた鶏の話の中で日本の神代の話は格別なはずだが、熊楠翁は「神代巻や古事記に、天照大神宮戸籠りの時、八百万の神、常世の長鳴鳥を集め互いに長鳴せしめたと見ゆ」と触れただけであとは本居宣長に委ねている。国民周知の話をくどくどいうこともあるまい、ということだろう
▼熊楠翁の話は展開が速く日本の話から英国にとびインドに渡ったかと思うと韓国の話になったりする。天才と言われる所以か。文、武、勇、仁、信に関する「鶏の五徳」の話は韓詩外伝によるとしながら「これについて可笑しきは」と「猫の五徳」を持ち出す話の運びは熊楠の面目躍如といったところだ
▼「諫鼓鳥(かんこどり)」は古代中国の善政の象徴だ。太鼓の上に留まった鳥の姿を諫鼓鳥と言い「諫鼓をば諫(いさめ)の鼓(つづみ)と読む」政治がよければ太鼓を打ち鳴らす人もなく太鼓の上の鳥が驚くこともない。平穏だ
▼平成29年の日本を取り巻く国際状況は想像を超えて厳しくなるのではないかと思えてならない。大衆に翻弄される韓国政治、アメリカ大統領の交代、軍事力を誇示する中国どれもこれも穏やかなことではなさそうで、もろに日本が影響を受けるのではないか
▼「諫鼓苔深鳥不驚」諫めの鼓は苔むして鳥は驚くこともない、平穏な年でありますように。