世界は混沌としているが、トランプ米大統領の登場で、混迷をさらに深めないか、世界は危惧している

▼ナチス党のヒトラーは、ユダヤ人を劣等民族として差別、不況の原因を彼らに押し付けた。また、第一次世界大戦敗戦後に戦勝国によって課された過酷な賠償に反発する民衆の不満を扇動・組織して議会を通して正式に政権を獲得したが、その野望は第二次世界大戦を引き起こした。彼らの手法はポピュリズムと言われるもので、従来の政治体制やエリート等を、民衆を苦しめる悪・敵として政治を行っていく

▼トランプ氏は格差の拡大等で貧困にあえぐ民衆の敵として、「移民」や「自由貿易」、ホワイトハウスのエリートを感情的で粗野な言葉で攻撃する。しかし、新自由主義的傾向の強い共和党政権下では格差の一層の拡大が懸念される

▼いろいろな矛盾が見え隠れする。そのひとつ、共和党はオバマ政権の、公的補助を通して国民皆保険を目指す医療保険制度に反対してきた。曲がりなりにも成立した制度をトランプ政権は廃棄するという。しかし政府支出を嫌う「小さい政府」を標榜する共和党と新大統領のもとで、よりよい医療保険制度ができるだろうか

▼彼は「米国第一主義」を主張するが、そこには他の国々との相互依存関係の認識と、共存共栄の理念が欠落している

▼彼は、米国を被害国と意識するが、加害国であった数々の歴史を認識しない。たとえば、自国の世界戦略の犠牲にされている「沖縄」問題の不条理を認識しているかどうか。