行雲流水
2017年3月14日(火)9:01
【行雲流水】(まど・みちおの詩)
童謡『ぞうさん』や『一年生になったら』の作詞で知られるまど・みちおに『ぼくがここに』と題する詩がある
▼「ぼくがここにいるとき/ほかのどんなものも/ぼくにかさなって/ここにいることはできない。もしゾウがここにいるならば/そのゾウだけ/マメがいるならば/その一つぶのマメだけ/しか、ここにいることはできない。ああこのちきゅうのうえでは/こんなに/だいじに/まもられているのだ/どんなものが/どんなところにいるときにも。そのいることこそが/なににもまして/すばらしいこととして」
▼すべての存在を誇りある存在として肯定している。『くまさん』は「-水にうつったいいかおみて/そうだぼくはくまだった/よかったな」
▼『ゾウさん』。「ぞうさんぞうさん/おはながながいのね/そうよかあさんもながいのよ」。この歌詞は自らの持つ他の動物との差異を肯定し、誇りとするものとされる。大好きな母さんも鼻が長いことで誇りは確固たるものになる
▼作者は「違っても仲良くしようではなく、違うから仲良くしよう」と言っている。「目の色が違うから、肌の色が違うからすばらしい。違うから仲良くしよう」ということである。すべての存在はかけがえのないものであり、その多様性が世界を豊かにしているということであろう
▼それにしても、こんな易しい言葉で本質を深くとらえていることに驚く。まど・みちおは百歳の時に語っている。「どんな小さなものでも、見つめていると、宇宙につながっている」