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私見公論
2017年6月9日(金)9:01

【私見公論】ものがたりを紡ぐ/大城 裕子

~文化協会の活動から①~

 宮古島市文化協会は、平良市文化協会を母体として、5市町村合併の翌年2006(平成18)年に設立されました。48の団体会員と個人会員、合わせて約600名とその活動を支える賛助会員で構成され、宮古島市の文化振興を目的に活動しています。主な事業に「市民総合文化祭・一般の部」「鳴りとぅゆんみゃ~く方言大会」があり、そのほか年度ごとにさまざまな事業を創出し、取り組んでいます。そして、今年度、宮古島市と宮古島市教育委員会の支援を得て、当協会は新たに「宮古島文学賞」を創設しました。

 宮古では、宮古文学の「種蒔く人」と称され、郷土の文芸活動を支えてきた故平良好児氏(1911~1996)を顕彰する文学賞が、1997(平成9)年から「顕彰会」によって実施されてきました。その後宮古毎日新聞社が主催となり、継続された「平良好児賞」ですが、2014年諸事情により終了しています。(宮古の文芸活動の振興に尽力した顕彰会や運営事務局のスタッフ、そして宮古毎日新聞社に一市民として心から敬意を表します)

 その後、文学賞の再開を求める多くの声が当協会に寄せられたため、昨年8月に創設に向けて準備委員会を発足。熱い議論を交わしながら、宮古から発信するに相応しい「文学賞」の在り方を模索しました。同時に多くの市民から期待と温かい励ましを頂き、準備を進め、先月22日、記者会見で概要発表。まだ実施要項と募集要項を公表した段階ですが、文学賞を形作るために実に多くのエネルギーを費やしてきたからでしょうか、既に事業を半分終えたような心境です。

 宮古島の文学風土は、口承文芸や英雄叙事詩など個性豊かな土壌として、今日まで受け継がれてきました。その営々と流れる文学への思いを礎として、文芸活動のさらなる振興を図り、島を渡る風(島を訪れる人、島と関わる人)と珊瑚礁に育まれる「文学」を宮古島から発信することを目的に創設した宮古島文学賞。今回は募集する作品を短編小説1本に絞りましたが、ここに辿り着くまで紆余曲折。最初に掲げた部門は、小説・シナリオ・随筆・詩・短歌・俳句・漫画の何と7部門もありました。文芸への入り口を多く設けることで一人でも多くの人に創作してもらいたいという思いからでしたが、準備委員の皆さんと各分野の宮古における創作活動状況等の情報や意見を出し合った結果、宮古ならではの文学賞として部門を絞ったほうが良いという理由と運営する側のいろいろな意味での体力が課題となり、最終的にテーマを「島」とした短編小説のみに収まりました。そして、純文学・児童文学・推理・歴史・SF等ジャンルは問わない、という(ある意味大胆な)多様性を持たせました。テーマに沿って、各々がそれぞれ自由なスタイルでものがたりを紡いでほしいと願っています。どなたでも応募できます。思い思いに内なる世界を表現してください。

 愛媛県松山市には、斬新な作風の青春文学小説を隔年で募集する「坊ちゃん文学賞」があります。そのポスターのコピーが実に楽しい。お年寄りバージョン 「その人生、語れば説教。書けば文学。」、サラリーマンバージョン 「その不満、言えば愚痴。書けば文学。」、主婦バージョン 「その毎日、思えば平凡。書けば文学。」文学が特別なものではなく、とても身近に感じられます。今回宮古で文学賞を創設する理由もそこにあります。あの人もこの人も書く。あの人の作品もこの人の作品もみんなで読む。「島」というテーマで紡がれるそれぞれのものがたりを通して、島の暮らしを見つめる。「あっ、そろそろ文学賞の発表だね」とみんなワクワクしながら、私たちの島の文学賞に全国から応募してきた作品に期待を寄せる。書くことの喜びを知った島の高校生が、その後作家になる。「宮古島といえば、文学賞だね。」

 そういう景色を夢みています。多くの作品に触れることで新しい景色が見えてくるでしょう。島の暮らしを心豊かなものにしたい!文化協会の願いです。

 大城 裕子(おおしろ・ゆうこ)1963年生まれ。宮古島市狩俣出身。87年青山学院大学卒業。88年佐良浜歯科医院勤務。2005年琉球COLLECTION叶設立。2008年Ryukyu CollectionKana,LLC設立。宮古島プロジェクト・宮古島キッズネット共同運営。11年宮古島市文化協会副会長就任。12年同協会会長就任。沖縄県文化協会理事。

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