日本初の刑務所内撮影
映画「プリズン・サークル」/坂上監督らあいさつ
「プリズン・サークル」の上映後に行われた坂上監督(奥左)らによる舞台あいさつ=16日、よしもと南の島パニパニシネマよしもと南の島パニパニシネマで現在上映中のドキュメンタリー映画「プリズン・サークル」の坂上香監督と、この映画に登場する男性による舞台あいさつが16日、同シネマで行われた。日本初となる刑務所内の長期撮影となった作品。取材許可が降りるまで6年を要したことや、2年間掛けて密着撮影した経緯や背景などが紹介された。
この映画は、刑務所に服役する4人の若者が、新たな価値観や生き方を身に付けていく姿を克明に描き出した作品。
官民協働の新しい刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」の取り組みを撮影した内容。受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促す「TC(回復共同体)」プログラムを紹介している。
舞台あいさつでは、坂上監督と登場人物の1人の男性が撮影当時を振り返りながら、この映画が訴えかけることやメッセージについてそれぞれの思いを語った。
坂上監督は、この男性の印象について「取材対象者の全員のことは当初覚えられなかったが、沖縄なまりを持っていたのでとても印象に残っていた。最初はなかなか思った言葉が出てこなくて、自分の思いを表現できずにいた。しかし、しばらくして再度取材した際には一気に変化して周囲に慕われ、自分の言葉でその思いを話せるようになっていた」と振り返った。
その理由について、この男性は「自分がなぜこの場所に来たのかしゃべりたいとの思いでTCを希望した。思いを言葉で伝えるために本を読むことを進められて、文学作品などを読むようになった。難しい作品は文章の中にちょっとした言葉の機微などが含まれているほか、難しい言葉が多く、何回読んでもわからない部分が多かった。知らない言葉は辞書で調べた」と話した。
その上で「本を読み、TCで社会のいろいろな問題について議論して意見を重ねていく中で(自分の思いを表現できる)言葉を獲得していった」と、自らが変わってきた経緯を振り返った。
会場では、坂上監督の呼び掛けで観客が作品を見た上での感想や心に残ったこと、共感できなかった部分などについてそれぞれが意見を交換した。
坂上監督は、本音で語ることが更生に向けては有効であり、そうした場がとても大切であることを訴えた。