再エネ事業継続に暗雲/狩俣自治会
執行部に内部から不満/「あまりにも独断専行」
EVの維持も不透明
SDGs(持続可能な開発目標)の理念を掲げ地域に電気自動車(EV)を導入して、過疎地域解消を目指した取り組みが各方面から高い評価を受けている狩俣自治会(國仲義隆会長)。しかし、リース契約で導入したEVの運用資金が確保できずに10月以降は実質赤字の状態が続いているという。さらに、その運用の在り方などをめぐって自治会内部から不満の声が噴出していることから、この取り組みが今後「持続」できるかは不透明な状況となっている。
この事業の導入までに同自治会執行部は昨年12月から3カ月間、環境省の予算で実証試験を実施。同試験の結果を踏まえて、「住民からの要望も多かった」との理由から、取り組みの継続を決定したという。
今年4月からは民間企業からEV2台をリース契約で導入し、地域に住む生徒の通学や高齢者の通院を相乗りで送迎する無料サービスを実施してきた。
この再生エネルギーを活用して過疎地域解消を目指した取り組みは、総務省などから高く評価され、2021年度過疎地域持続的発展優良事例表彰では会長賞に選ばれるなど、その取り組みは現在も各方面から注目を集めている。
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新規事業で過疎解消を目指した前向きな取り組みが地域一体となって稼働したかに思われたが、総会などでの説明も無いまま事業を進める執行部の動きに対して、自治会内から疑問の声が出るようになった。
現執行部の運営を問題視する「狩俣の歴史と文化と字有地を守る会」のメンバーは「総会でも事前にこの取り組みについて何の説明もされず、多くの住民がなぜEVが地域を走っているのか分かっていない。住民が分からないことが多すぎる。今の執行部は独断専行ですべてを進めすぎている」と怒りの声を上げる。
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國仲会長によると、自治会の新規事業については独立採算制が原則との方針で、自治会の予算は使わず、その会計は会長を責任者にして運営面は自治会三役の3人で運用する方針となっていたようだ。しかし、こうした方針が状況を複雑化させた。
今回の新規事業で導入したEV2台のリース契約の内容は、5年間で支払い総額は約300万円。月々の支払い額は8万円。
自治会の予算は使わないとしながら、このリース契約は、同自治会と民間企業2社との間で結ばれていることから、ある住民からは「自治会として契約したのであれば、総会に議案として提案するべきだと思う。役員だけで運用することも全然知らなかった」との声も聞かれた。
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執行部三役はこれまで、リース代金については企業や個人に対して寄付金を募り、7月までに約53万円を集め、それをリース代金に充てて運用してきたが、10月以降はそれだけでは対応できなくなってきたという。
本紙の取材に執行部は「自治会には迷惑は掛けない。自分たちの責任でリース代金はなんとかしたい。この事業は大切だと思うので地域に迷惑を掛けずに続けたいとの思いはある」としているが、地域全体で取り組むべき事業でありながら、一部の役員だけで進めている現状のままでの運営は難しい状況となっている。