カママ嶺に「愛と和平」
「牡丹社事件」の石像移設/市教育委員会
「牡丹社事件」の加害者と被害者の和解の象徴、「愛と和平」の石像が16日、下地中学校からカママ嶺公園に移設された。関係者は「友好の証しとして後世に伝えてほしい」と移設を歓迎。今後は、事件の概要を正しく伝えていく取り組みに期待を示した。移設作業は市教育委員会が業者に委託。公園内の「シーサー滑り台」西側に設置された。
石像をめぐっては2005年6月に台湾から訪問団が来島した際、双方が謝罪し、未来志向の友好を築いていこうと「和解」が成立。石像はこのことを記念して台湾側から寄贈された。
石像は台座を含め高さ約160㌢。琉球風の衣装とパイワン族の衣装を着た若者が肩を組み、二つの杯(さかずき)がつながった「連結杯」で酒を酌み交わしている。
台湾の学校と交流がある下地中学校の正門左にある「台湾の森」に設置されたが、市民らが自由に見学することができないため、長い間、多くの人に存在が知られていなかった。
このため、「牡丹社事件 日本と台湾、それぞれの和解」(集広舎)の著者で知られるノンフィクション作家の平野久美子さんが2019年に来島し、誰でも自由に見学ができる公共の場へ移設するよう求めていた。
牡丹社事件 1871(明治4)年、宮古島民の乗った船が首里王府に年貢を納めた帰り、台風で遭難し台湾に漂着。上陸した66人が原住民族、パイワン族の集落に助けを求めたが、双方の誤解が重なり54人が殺害された。「琉球民遭難殺害事件」といわれ、台湾出兵のきっかけとなった。どちらも台湾恒春半島の「牡丹社」が舞台となったため、この二つを併せて「牡丹社事件」と呼ばれている。