豪快、優雅な踊り奉納/上野野原の十五夜行事
「マストリャー」4年ぶり開催
上野野原の伝統行事「野原のマストリャー」が旧暦8月15日の十五夜に当たる9月29日夜、野原公民館で行われた。満月の下で男性は豪快な棒踊りを、女性は優雅な舞をそれぞれ奉納し、向こう1年間の五穀豊穣(ほうじょう)を祈願した。公民館には多くの地域住民と野原出身者らが集まり、脈々と受け継がれてきた伝統行事を見守った。新型コロナウイルスの影響によって4年ぶりの開催となった。
会場には心地よい秋風が吹き、月明かりが降り注ぐ中、午後9時半すぎに祭りは本番を迎えた。集落内の子(ね)組、寅(とら)組、午(うま)組、申(さる)組の4カ所の升元で酒宴を開いていた男性らが野原公民館に集合し、マストリャーが幕を開けた。
男性は勇ましい掛け声とともに棒を打ち鳴らし、女性はクバ扇や四つ竹を手に優雅な舞を披露した。最後は参加者全員で輪になり、クイチャーを踊った。
公民館に訪れた住民らは、300年続くといわれるマストリャーの世界を4年ぶりに堪能した。
マストリャーは国選択および市指定の無形民俗文化財。語源は穀物が税だった時代に「升取屋」と呼ばれる升元にこれを納めていたことに由来する。祭りは税の完納を喜び、来る年の豊作を祈願して行われるようになったと伝えられる。
野原部落会の根間直也会長(59)は「4年ぶりで不安もあったが、みんなの協力のおかげで開催できたことをうれしく思う。マストリャーは野原にとって一大行事であり、みんなの気持ちが一つになる。ずっと続けていきたい」と復活を喜んだ。
マストリャーに参加した野原在住の60代女性は「4年ぶりなので感慨もひとしお。3年間空白があるので流れるような踊りができなかった。満月の下で野原だけでなく、宮古全体や世界の平和と繁栄の踊りが披露できて良かった」と話した。