若者の心つかむ「正解」/卒業生の歌で大人気
中、高校15校中7校が採用
卒業式の定番ソングは、年代ごとによって移り変わってきた。以前は「仰げば尊し」「贈る言葉」「卒業写真」などがあったが、ここ数年の宮古の中学校、高校の卒業式でよく採用されるのはロックバンドのRAD WIMPSの「正解」だ。その歌詞は、「答え」のある「問い」ばかり教わってきたことに疑問を投げかけ、自分なりの「正解」を探す人生がテーマ。最近の卒業生たちはその内容に共感しているようだ。
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今年の宮古の卒業式における卒業生の歌で「正解」を採用したのは、県立高校3校のうち2校。中学校では宮古と多良間の12校のうち5校が採用。中学、高校合わせた15校のうち、約半数の7校に選ばれていることから、卒業生から最も共感を得ているのがこの「正解」だ。
この曲は、2018年にNHKで放送された「RADWIMPS18祭2018」において制作された楽曲。その後、その歌詞は若者の心をつかみ卒業ソングとして年々、全国に浸透していった。
「正解」の意味を調べると「正しい答え」とある。しかし、この歌における「正解」は、すでに答えのある「問い」を求めていない。
好きな人、友人との関係性や自分との向き合い方など、答えのない問いに向き合うことの大切さ、先の見えない中で自分なりの正解を探していくことへの強い決意が込められている。
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最近の中学、高校の卒業生たちは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらの学校生活を強いられた。
特に今年の高校卒業生たちは、中学から高校にかけての長い期間、さまざまな制限を強いられる日々が続いた。
その中でこの「正解」の歌詞が、卒業生たちを引き付ける強いメッセージとなったのかもしれない。
「正解」には、「なに一つ見えない僕らの未来だから答えがすでにある問いなんかに用などはない」という歌詞がある。
コロナ禍で当たり前だったことが当たり前にできないもどかしさ。世界中に広がる感染拡大で先が見えない不安。まさに「なに一つ見えない未来」の中で過ごした学校生活だった。
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長期化したコロナ禍では、消毒、マスク着用などの予防対策だけでなく、3密(密閉、密集、密接)状況を避けるため、外出自粛の徹底も求められた。
友人たちと思うように共有できない時間。「正解」の中では「一番大切な君」と仲直りの仕方、傷ついた友の励まし方、仲間とのつながり方など、答えのない問いが歌詞にはちりばめられている。
そして最後の歌詞は、人生を「試験」と捉えて、「制限時間」「解答用紙」「採点基準」は「あなたのこれからの人生」とし、最後は新しい人生(試験)が始まるように「よーい、はじめ」で締めくくっている。
コロナ禍における学校生活の中で、さまざまな制限を強いられながらも仲間たちと一緒に乗り越えてきた。そして、答えのない未来に向けて歩み出した卒業生たちにエールを送りたい。(編集部・垣花尚)