全身で「宮古フツ」体感中/地域に属して方言研究
藤永清乃さんとクリスティアンさん/宮工生徒に言語学の魅力紹介
2015年に宮古で行われたフィールドワークで出会ったアメリカに住む2人の女性が現在、宮古方言の研究のため来島している。この2人は、大分県出身で現在はニューヨーク州立大学バッファロー校で言語学を学ぶ藤永清乃さん(27)とハワイ大学で言語学を学ぶ日系4世のクリスティアン・オノさん(24)。
この国籍の違う2人が共通するのは、文書や文献を中心とした研究ではない。
実際にその言語が語られる社会の中に入り込み、会話の中で活用される単語やセンテンスを記録に残しているほか、その地域における方言(言語)が現在どのような状況に置かれ、さらにその言葉を活用する人たちの背景との関わりなどをも含め研究している。
現在、2人は西原地区の知人宅に短期ホームステイ中で、地元の人たちが実際に話す方言に囲まれた生活をしている。
研究の状況について、2人は「正直、2人ともそんなに社交的ではないので、いろいろと難しい部分もあるが、おじい、おばあに積極的に話しかけながらデータを収集している」と笑顔になる。
それでも2人は「単に辞書の中に単語や発音のような文献中心ではなく、言語が実際にそのコミュニティーの中でどう使われているのかをその社会に属しながら研究することがとても大切。会話の中でお年寄りたちの人生をかいま見ることもできる。その背景を含めて地域言語を学ぶことに意味がある」と話した。
研究真っ直中の2人は29日、宮古工業高校を訪れ、生徒たちに自分たちが行っている研究の内容や言語学の魅力を紹介。
生徒たちに対して2人は絶滅が危惧(きぐ)されている言語がこの島に存在し、それが大切な財産であることを訴えながら、言語としての英語を学ぶことで世界が広がることを伝えた。
クリスティアンさんは来月1日に宮古を離れるが、藤永さんは、来月も佐良浜地区と池間島で研究を継続する。
言語学に興味を持った理由について、藤永さんは「子供のころ『外国人は目の色が違うので見えている世界が違うかもしれない』との思いがあった。中学のころに言語相対性理論を学び、『話す言語によって考え方も違う』との説に出会い、それを調べたいと思った」と話した。
宮古方言が衰退する中で、島の人たちの考え方や捉え方も昔に比べて大きく変化してきた可能性もある。
2人の研究がさらに進めば、失われつつある宮古方言を通した世界の見え方、考え方を再発見できるかもしれない。