踊り奉納、豊作祈願/野原のマストリャー
月光浴びて優雅に舞う
上野野原の伝統行事「野原のマストリャー」が十五夜の4日午後、野原公民館の中庭で行われた。男性は豪快な棒踊り、女性はクバ扇や四つ竹を手に優雅な踊りを奉納し、向こう1年間の五穀豊穣を祈願した。
マストリャーは旧暦8月15日の十五夜に行われる行事。語源は穀物が税だった時代に「升取屋」と呼ばれる升元にこれを納めていたことに由来する。祭りは税の完納を喜び、来る年の豊作を祈願して行われるようになったと伝えられる。市指定の無形民俗文化財。
午後9時50分ごろ、集落内の子組、寅組、午組、申組の4カ所の升元で酒宴を開いていた男性らが野原公民館に集合し、今年のマストリャーの幕を開けた。
中庭に入ると、男性は勇ましい掛け声とともに棒踊りを披露し、荒々しい動きで棒を打ち鳴らした。一方の女性は静かに流れるような踊りで豊作を祈った。
最終的には円になって踊りを奉納し、中秋の名月の下で掛け声を響かせた。
公民館には地域住民のほか、観光客や本土から修学旅行で来島している生徒たちも訪れ、数百年続くマストリャーを堪能した。
この行事を取り仕切る区長の平良信男さんは「野原の伝統行事は本当に素晴らしい」と目を細め、「若い人が参加してくれることが大きい」と伝統をつなぐ住民意識の高さを誇る。「若い人が参加することで来年にもつながる。しっかり守り続けたい」と話した。
そんな祭りに今年初めて参加したのが大阪から嫁いだ久貝千春さん(38)。踊り終えて、「なかなかタイミングがつかめずにまだまだという感じです」とはにかむ。それでも「ベテランの皆さんの踊りを見よう見まねでやっているけど参加できて良かった。来年も参加したいです」と晴れやかな表情で話していた。