森林率が低下、蔡温に学べ/仲間名誉教授が出版記念講演
琉球大学名誉教授の仲間勇栄農学博士(68)の近著「蔡温と林政八書の世界」の出版記念講演と祝賀会が17日、市内のホテルで行われた。仲間氏の友人、知人や関係者ら約150人が出席した。仲間氏の記念講演で出席者らは、蔡温の山の管理哲学や自然観などについて知識を深めるとともに、出版を盛大に祝った。仲間氏は講演の中で「宮古の森林率は約16%。30%を切ると人間の不快指数が増すという研究もある。目先の収入にとらわれ島の自然や生態系失うと100年後には大変なことになっているかもしれない」と強調し、「先人や歴史から学び、30%に拡大することを頑張れば生産活動、景観を含め非常に良い島になるのではないか」と述べた。
仲間氏は、「白川氏十三代恵通が1738年、蔡温から『山林真秘』を賜った。これを基に恵通は宮古諸島の大野山林などの植林事業を始めた」と宮古と蔡温の関わりについて説明した。
仲間氏は「恵通の時代に多良間の村のレイアウト、集落や屋敷の周辺にフクギ林などを多良間で測量し造成した。現在、王府時代から県内で唯一原形が残る『多良間島の村抱護(ポーグ)』だ」と説明し「冬の北風を防ぐように村の北側に林帯があり集落には屋敷林がある。北側の林帯に墓地や御嶽を造った。御嶽の木は勝手に切ることができないので、林帯が護られるというのが狙いだった。考え方は風水地理。宮古や沖縄本島にもあったが、戦争や土地改良でほとんど跡形もない」と説明した。
仲間氏は「抱護とは林、村落、田畑が地形、林の風水要素で囲まれ、気(空気の乾湿が調和、安定)を密閉している環境状態のことで、蔡温の『林政八書』は、抱護の土地利用の意味は農地、村落、海浜環境の保全と生物多様性を維持することを教えている」と結んだ。
記念講演後に祝賀会が行われ、県緑化推進委員会副理事長で発起人代表の長間孝さんが「この本の出版を機に、蔡温の自然観や思想を生かして、宮古の緑づくりに取り組む必要がある」とあいさつした。
来賓として出席した宮古島市文化協会の大城裕子会長は「宮古島を今一度見つめながら、自然との共生を目指し、自然に抱かれ護られて、心の安寧を得られるよう考える時期に来ていると思う」と祝辞を述べた。